自分はむかし「愛情物語」という洋画を

テレビで観たことがあります。―――

この映画は実在のピアニスト、

エディ・デューチンの伝記映画で、

彼とその家族のきずなを描いています。

 

エディに扮したのは当時人気絶頂の

ハリウッド男優タイロン・パワー。―――

またキム・ノヴァクが彼の妻を演じていました。

 

実は少し前のことになりますが、

この映画を徳光和夫さんが中居正広さんの

テレビ番組のなかで紹介していました。

このとき自分は何十年ぶりかでこの映画に再会。―――

 

放映されていたいくつかの映画のシーンを観つつ、

主役のタイロン・パワーが弾く

「トゥー・ラヴ・アゲイン」を

懐かしく聴いていました。

 

ご存知の方も多いと思いますが、

この曲はショパンが作曲した夜想曲(ノクターン)

第二番をアレンジしたもの。―――

なお映画のなかで実際にピアノを弾いていたのは

カーメン・キャバレロというお方です・・・。

 

彼は甘美かつスタイリッシュなメロディに乗せて、

華麗な技巧を披露していました。

また映画のなかでは、エディの幼い息子が

第二次世界大戦の戦地から帰還した父親を前にして、

このショパンの原曲を弾いていました。

 

さてショパンはその短い生涯で

夜想曲を21曲作曲しました。

本曲第二番変ホ長調は

そのなかでも最も有名なノクターン。―――

 

古来これこそが「ノクターンの代名詞」

と言う人も多く、

4小節からなる楽句が装飾を繰り返しつつ

甘く感傷的にうたい上げられています。

 

なお夜想曲という形式はアイルランド生まれの

作曲家フィールドが創設しました。

ショパンは彼の作品を模倣することから始めたようで、

本曲には彼の影響もみられるとのこと。―――

 

とは言えさざ波のような伴奏音型の上に

歌謡調の美しい旋律が綿々と歌われるところは、

ショパンならではの個性と思われます。

 

またショパンはその年齢を重ねていくうちに、

ノクターンのジャンルにおいても、

内面的な深い感情を表現する

独自の世界を築き上げていきました。

 

なので今回ご紹介する第二番以外にも

素晴らしい楽曲が目白押し。―――

 

流麗でしっとりした情感が印象的な第5番。

壮大なスケールのなかで揺れ動く感情を

ドラマティックに表出した第13番。

素朴な旋律がやや陰鬱な気分をかもし出す第15番。―――

また遺作として慕われている第20番は、

「戦場のピアニスト」という映画の

テーマ曲にもなっていました。

 

彼のノクターンに興味を持たれた方は

ぜひ全曲録音盤をお聴きになられることをお薦めします。

 

自分はこの曲をワルター・ハウツィッヒが弾いた

LPアルバムで初めて聴きました。

このアルバムはクラシック初心者向けの

オムニバス・レコード。―――

なのでその演奏は楽譜に忠実で(?)

分かりやすいものだったと記憶しています。

 

その後、ブライロフスキーやフランソワ、

アシュケナージの全曲録音盤や、

ステファンスカのショパン・アルバムで聴いています。

 

これらはいずれも繊細、優美な演奏。―――

なかでも詩的な感興にあふれたフランソワと、

流麗極まりない達演を聴くことができる

アシュケナージの演奏が印象的です。

 

また本曲をアレンジした「トゥー・ラブ・アゲイン」

につきましては、カーメン・キャバレロによる演奏が

YouTubeでも聴けます。

自分はかつて彼のアルバムを持っていましたが、

残念ながら今自分の手元にはありません。

 

なおここでご紹介しました演奏は、

数ある録音のごくごく一部にすぎません。

名曲だけに名演奏がまだまだ目白押し。

皆さんのご参考になれば幸いです。

 

ショパン 夜想曲第二番

(水彩画は静物を描いた習作です)