北欧デンマークのミステリー作家ローネ・タイルスの長編小説。

主人公の女性ジャーナリスト、ノラが三十年前に発生した

少女失踪事件の謎を解き明かそうとする物語りです。

 

イギリスに向かう船で二人のデンマーク人少女が消えた。

その生死が不明のまま、事件は迷宮入りとなった・・・。

その三十年後、女性ジャーナリストのノラ・サンドは、

少女たちが消える直前に船上で撮られたと

思われる写真を偶然手に入れる。

その写真に写っていた少女が未解決事件の

当事者と知った彼女は、

少女たちの過去を掘り起こすリサーチを開始。―――

 

やがて三十年前の失踪事件がイギリス国内で発生した

残虐な連続殺人事件と繋がっていることを察知する。

さらに彼女はその連続殺人事件の犯人が

収監されている刑務所に赴き、

その男にインタビューを試みようとするが・・・。

 

本書の主人公ノラはデンマークの週刊誌

「グローバル」のジャーナリスト。―――

特派員としてロンドンに駐在する

仕事熱心で野心的な女性です。

 

また彼女は休日にはキックボクシングの

トレーニングに励む「タフ」な面を持つ一方で、

ユーモアもあり優しい笑顔も

魅力的なお人でもあります。

 

そんなノラが三十年前の未解決事件解決の

鍵を握る写真を入手。―――

ジャーナリストとしての勘を働かせた彼女は、即座にイギリス

・デンマークにまたがるリサーチに動きだしました・・・。

 

その過程で各所の警官たちや弁護士、またスコットランドヤード

の腕利きの犯罪心理捜査官らとたびたび衝突。―――

さらにノラの身にも新たな危険が迫ってきますが、

彼女はひとりでの探索を続行します。

 

やがてノラは真犯人と直接対決。―――

大きなクライマックスを築くとともに

読む者をカタルシスに導いてくれます。

読者は最後の一ページまでページをめくる手を

休めることができないハズです。

 

ところで本編にはノラがイギリスの刑務所に収監されている

ある犯罪者と面会するシーンがあります。

その収監者はイギリス国内で十人以上の

若い女性を殺害したという男。―――

 

サイコパス(精神病質者)である彼は、いわゆる

シリアルキラー(連続殺人者)と呼ばれる者の一人です。

この刑務所内の面会シーンは

本書中盤のクライマックスの一つ。―――

 

冷え冷えとした雰囲気のなかで交わす二人の会話は

息詰まるような緊張感にあふれています。

どうやら作者はこの殺人犯をトマス・ハリスが創造した

「食人鬼」レクター博士に擬している様子。―――

 

彼の著作である「羊たちの沈黙」や

「ハンニバル」の雰囲気を漂わせたこの場面。―――

読者に相当なインパクトを与えたような気がします(?)。

 

令和6年3月8日  読了 B (ハヤカワ文庫)

 

ローネ・タイルス 「北海に消えた少女」

週刊誌のジャーナリスト、ノラは取材でイギリス南部の港町に訪れた

おり、ある骨とう品屋で古びたスーツケースを購入する。彼女はアン

ティーク雑貨が大好きだった。翌朝ロンドンの自宅でそのスーツケー

スを開けると、中から写真のたばが出てきた。そのなかの一枚には三

十年前にデンマークで行方不明となった二人の少女が写っていた。