ベルリーニは18世紀前半に活躍した

イタリアのオペラ作曲家。―――

彼は三十三歳という若さで亡くなりましたが、

その短い生涯のなかで今回ご紹介する

歌劇「ノルマ」や「夢遊病の女」「清教徒」など

いくつもの名作を世に残しています。

 

突然ですが皆さんは「(ドイツ)3大B」という

言葉をご存知でしょうか(?)。―――

もしかしたら学校の授業で習った記憶がある方も

いらっしゃるかも知れません。

 

これはある音楽家が3人のドイツの

偉大な作曲家であるバッハ、ベートーヴェンと

ブラームスを指したもの。―――

「B」というのは彼ら3人の頭文字を表しています。

 

ところがストラヴィンスキーという現代音楽の作曲家は

(これに文句をつけたかどうかはいざ知らず)

「Bはふたつ。ベートーヴェンとベルリーニだ」

と言ったか、言わなかったとか(?)・・・。

 

また彼以外にもショパンやベルリオーズ、ワーグナーなどが

ベルリーニの楽曲を愛して止みませんでした。

ワーグナーは本曲の歌劇「ノルマ」について、

こう述べています。―――

「最も深い真実の輝きと最も流麗な旋律の全くの結合体」。

 

ワーグナーは「楽劇」という

舞台総合芸術を作り上げたお人。―――

この言葉はワーグナーによる

最高の賛辞であったに違いありません。

 

さて歌劇「ノルマ」の舞台は紀元前50年頃の

ガリア地方(現在のヨーロッパ中央部、南部)です。

その頃ローマ帝国の支配下にあったドルイド教徒たちは

反乱の機会を伺っていました。

 

「ノルマ」はドルイドの巫女ノルマと、

宿敵のローマ将軍ポリオーネとの

秘められた恋の行方を扱っています・・・。

 

ノルマが歌う有名な祈りのアリア「清らかな女神」や、

彼女と年若い巫女アダルジーザとの二重唱。

またノルマとポリオーネが火刑台の炎のなかに消えていく

ドラマティックな幕切れなど。―――

歌唱とドラマ双方の魅力が合体した作品として、これを

ベルリーニの最高傑作に推すファンも多いようです。

 

「ノルマ」を最高の当たり役としたのが

他でもないマリア・カラスでした。

自分はセラフィンが指揮したモノラルの

古い録音で本曲を聴いてきました。

 

彼女は終始張りがあって力のみなぎった声を

自在に駆使。―――

とくに第一幕で彼女が歌う「清らかな女神」は、

カラスの語りかける言葉の一つひとつが聴者の心に

直接響いてくる稀有の名唱だと思います。

 

なお彼女の歌声は映画「マディソン郡の橋」

のなかで披露されています。

それはヒロインのメリル・ストリープさんがクリント・

イーストウッドにお会いする直前のこと。―――

 

自宅でひとり静かにラジオを聴いているヒロインは、

そのときカラスが歌っている「清らかな女神」を耳にします。

こののどかなシーンはこれから始まろうとしている

二人の運命的な出会いを予感させてくれる印象的な場面でした。

 

ところで歌劇を楽しむ場合に

視覚を伴うDVDを視聴するのも一手。―――

アンダーソンというソプタノ歌手がノルマを演じたDVDも

ありますので、興味のある方はどうぞこちらも。

DVDですと舞台の雰囲気がよくわかりますね。

 

なおここでご紹介しました演奏は、

数ある録音のごくごく一部にすぎません。

名曲だけに名演奏がまだまだ目白押し。

皆さんのご参考になれば幸いです。

 

ベルリーニ作曲「歌劇ノルマ」

(水彩画はマリア・カラスです)