ラフマニノフは旧ロシアを代表する

後期ロマン派の作曲家。―――

と同時に比類のないテクニックを持った

超絶のピアニストでもありました・・・。

 

自分はむかし彼自身が弾いたピアノ協奏曲第二番を

ラジオで聴いたことがあります。

そのとき、貧しい音源のなかで奏でられていた

彼のピアノの音色にくぎ付け。―――

 

とくに驚いたのは端正な彼の弾きぶりでした・・・。

やや早めのテンポで淡々と

それでいて情感も豊かなピアノの音色に接し

目からうろこが落ちた記憶があります。

 

ところでラフマニノフの代表作というと、

やはり得意のピアノをフューチャーした数々の楽曲。―――

とりわけ人気のある曲は

ピアノ協奏曲第二番と第三番だと思います。

 

暗い情感をたたえつつ

様式的な美しさをも兼ね備えた第二番。―――

広く人口に膾炙しているメロディーも目白押しで、

この曲のファンは相当多いものと思います。

 

その一方で第三番はさらにスケールアップ

した楽想が魅力的な一曲。―――

曲作りも自由奔放をきわめ、作曲者のイマジネーションが

そのピークにあったと言っても過言ではないと思われます。

 

さて本曲ピアノ協奏曲第三番は

三つの楽章で構成されています。―――

 

第一楽章はピアノが奏でる印象的な第一主題で始まります。

そのほの暗い情感を秘めたメロディーが

この楽章のイメージを決定。―――

やがてピアノが大活躍する展開部を経て第一主題が回帰し、

曲は静かに終わります・・・。

 

第二楽章は静かなカンタービレと情熱的な曲想が交錯。―――

全曲の情緒的なクライマックスを形作ります。

 

第三楽章は雄大なコーダ(終結部)を持った

ソナタ形式の楽曲。―――

コーダでは全管弦楽とピアノが競い合うように、

また同調するように曲想を盛り上げていくさまは

まさにラフマニノフの真骨頂とも言えそうです。

 

演奏効果が非常に高い楽曲なことから、

古来より数多くの著名なピアニストたちが

競って本曲を演奏、録音。―――

自分は今までアシュケナージやアルゲリッチ、キーシン、

ジャニスらがピアノを弾いた録音を聴いてきました・・・。

 

とりわけ今でもよく聴いているのは、

アシュケナージ(プレヴィン指揮、ロンドン交響楽団)と

アルゲリッチ(シャイー指揮、ベルリン放送交響楽団)

の演奏です。―――

 

アシュケナージは比較的遅めのテンポで

情感をこめた瑞々しい演奏が印象的。―――

プレヴィンの指揮も抜群のセンスで彼をバックアップしています。

なかでも第三楽章コーダの圧倒的な高揚感は聴くものを

興奮のるつぼに巻き込んでしまうこと必至。

 

一方アルゲリッチの演奏はそのけた外れな

ヴィルトゥオーゾ(名人芸)スタイルに圧倒されます。―――

とくに第一楽章で繰り広げられる長大なカデンツァ

(ピアノ独奏)を凄まじいスピード、かつインテンポ(同じ速さ)

で弾き進める迫力は他に類を見ることができません。

 

またキーシン(小澤征爾指揮、ボストン交響楽団)や

ジャニス(ドラティ指揮、ロンドン交響楽団)も

もちろん聴きごたえ充分の演奏です。

 

なおここでご紹介しました演奏は、

数ある録音のごくごく一部にすぎません。

名曲だけに名演奏がまだまだ目白押し。―――

皆さんのご参考になれば幸いです。

 

ラフマニノフ作曲 ピアノ協奏曲第三番