デニス・ルヘインによる、

孤島の精神病院を舞台にした長編サスペンス。

その一方で、密室からの人間消失や

不可解な暗号、意外な真犯人の登場など、

本格推理小説の匂いも強く漂う一編です。

 

精神を病んだ犯罪者のための病院で、

女性患者が謎のメッセージを残して姿を消した。―――

鍵がかかった病室からどのように抜け出したのか(?)。

そしてその病室には「四の法則」なる暗号が残されていた。

 

主人公の連邦保安官テディは病院に赴くものの、

彼の計画の狙いは、実は違ったところにあった。

彼の妻を殺した男がここに収容されていたのだ。

彼への復讐の念を捨てきれぬテディ。―――

やがてボストン沖の孤島に建つ病院で、惨劇が始まる・・・。

 

主人公テディと殺された妻ドロレス、

彼女を殺したとされるアンドルー。

そして逃げた患者のレイチェルと、

彼女がむかし殺したとされる三人の子供たち。―――

 

精神病院を舞台に、テディの過去の回想に

彼らたちが、たびたびフラッシュバックで登場。

次第に話がごちゃ混ぜに近い状態で提示されてきます。

 

読者は困惑しつつも、彼らの背後には

なにかの関連性が必ずある、と勝手に思い込みます。

ただしそれが何なのか、なかなかわからないのですが・・・。

 

そして衝撃のラストシーンがやってきます。―――

テディの目線で見てきた物語りが崩壊し、

いきなりひっくり返ってしまうという驚き(!)。

 

自分は今までルヘインという作家は「闇よ、我が手を取りたまえ」

など、どちらかと言うとストレートな筆致で描く

ハードボイルド小説の書き手だと思っていました。

それが本書や「ミスティック・リバー」を読んで

自分が持つ彼に対するイメージは変わりました・・・。

 

彼は極めて技巧的で複雑なプロットを駆使する作家でした。

もしくは、そうした作家に成長したのかも知れません・・・。

 

とは言え本書は、自分にとってとても新鮮な

「本格推理小説」として、楽しく読むことができました。

もちろんサスペンス満載の冒険小説としても・・・。

 

令和元年9月15日 読了 A (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

デニス・ルヘイン 「シャッター・アイランド」

連邦保安官テディは、妻を殺したアンドルーを追い

同僚のチャックとともに、岬の灯台に迫る。その灯台では、

昔から患者に対しておぞましい治療が行われているらしい。

テディは姿を消したチャックを捜索するうち、ある洞窟に辿りつく。

そこには昔「医師」だったという知的で美しい謎の女性がいた・・・。