よく訪れる公園には 大きな沼があり
そこで寛ぐ水鳥たちを眺めては
いつも癒されている


見飽きないなぁ


この公園では釣りOK

愛好者たちが
銘々のスタイルで釣りを楽しんでいる


釣竿を後ろに振りかぶって
トリャーッと遠くに飛ばす投げ釣りは禁止

そりゃそうだ


休日は特に人人人で賑わう公園だもん


釣り針が顔の前をかすめていったり
すぐそばで釣竿がブンブン鳴っては

いくら水鳥に癒されるといっても
もう恐怖の沼でしかない


もちろんこの公園で
ルール違反を目撃したことはないし
危ない思いをしたこともないんだけど


釣り場を見てると
どうしても あの記憶が頭をよぎって
つい距離をあけてしまう




これは当時 小学6年生の兄が
体験した話になる

※ 念のため予告させて頂くと 
   読み手にもちょっと痛い話です 



兄はよく友人と
近所の川に釣りに行っていた

その日もいつもと同じように
魚の匂いを纏って帰宅したのだが


いつもと違っていたのは 兄の口に
なんと 釣り針が刺さっていたのだ


下唇の1cmほど下の辺り
外側から口内へ貫通していた


釣り針というと 先っちょに
"カエシ" が付いていて

簡単に逆抜け出来ない
ようになっている


今の時代なら
鼻ピアスやら顎ピアスやら
絵的には珍しくないけれど

まるで
釣り上げた魚が そのまま人間に
変身したかのような 兄の姿は

当時 私の脳裏に
しっかり焼き付いてしまった



ちょうど
夕飯の支度をしていた母も驚いて
すぐに救急病院へ兄を連れて行こうとした時


針が邪魔してうまく喋れない
兄の口から出た言葉が
これまた 忘れられない


「ほのまへに、うまかっひゃん ふくっけ」
(訳 )「その前に、うまかっちゃん作って」


※うまかっちゃんとは 九州地域ではお馴染みの
   インスタントラーメン(とんこつ味)

~ハウス食品㈱ 公式HPより画像をお借りしました~


そう
病院に行く前に
まずは腹ごしらえをさせてくれ
と言うのである


えー!!
その口で食べれるとー???


怪訝な顔をしながらも
うまかっちゃんを作ってしまう母も母だが


釣り針の刺さった口で
上手にラーメンを啜る息子の姿に

食欲を無くすほどの痛みではないとみて
安心したのだろう





ラーメンを平らげた兄は
その後 病院で無事に針を抜いてもらった


おじさんになった今も よく見ると
傷跡が薄く残っている


魚は釣っても 釣られるな!


と今では笑い話になっている






【追記】
この釣り針事件は、友人が川に投げ入れようとした釣り針が、運悪く兄の口に刺さってしまったもの。

その夜、友人と親御さんがお詫びに来られたが、逆の立場になった可能性もあったわけで、今後はお互いに充分気を付けるようにと、釣り場での教訓となったようである。

兄は口だったが、目などの場合は失明の恐れもあったと考えると、不幸中の幸いだったと思う。
子どもだけで釣りをしている光景を見ると、つい思い出し、ケガのないよう祈るばかりである。