離れて暮らす父の
介護施設での生活がスタートして
2ヶ月ちょっとが過ぎた


前回の帰省では 父の体調が悪く
面会延期となってしまったので

今回ようやく父との面会が叶う




スタッフの方に付き添われて
ゆっくりこちらに歩いてくる


よく 私を叔母 (父の妹) と
間違えることがあったんだけど 

私の名前を呼んだ!

ピンポーン!すごいすごい!
  パチパチパチ!

楽しい面会になりそうだと
安心したのも束の間


すぐに険しい表情になり
テーブルに突っ伏して
「家に帰りたい」と大声で訴える


開始早々 繰り返される訴えに
父の背中を擦りながら

どう応えるのが的確なのか
わからなくなる

こんな声かけは 逆効果かな とか

考え過ぎると 言葉が出てこない






その様子に 心配した相談員さんが
側に来てくれて 正直ほっとした


お陰で少し落ち着きを取り戻した父に

用意してきた 明るい話題を振ってみる

その手には乗らんぞとばかりに
ため息で返されるも

やっと会えたんだからと
またしばらく会えないんだからと

頭フル回転で 構わず話題を振りまくる

……



空気が読めない娘との面会時間も
残りわずかとなり


なんとか最後に


皆 いつも父を心配していること

また必ず会いに来ることを告げて 終了





部屋に戻る父の背中を見送った後

施設の方から

家での生活は厳しいと
改めて話があった


正月くらいは一時帰宅して
父を喜ばせられるかもと
淡い期待を抱いていたけど

それは父には かえって酷なことだと
受け止めるしかなかった




認知症といっても
症状も程度も人それぞれ

症状が進んだように見える日もあれば
良くなってきたように見える日もある



家に帰りたいと 泣き叫ぶ父の姿は
私には まともな状態に思え

それが 辛かった



途中 側に付いてくださった相談員さん

慌てることなく
落ち着いた 優しい声かけに

きっと これまで何度も目にしてきた
光景なんだろうなと思った





父の施設入所は
「今出来る最良の決断だった」


何度も言い聞かせながら

施設を後にした





『施設の暮らしに慣れた』
『家に帰りたいと嘆くことがなくなった』

としたら それは
もう諦めに近い 心の変化からくるのか

もしくは

『自分の家や家族のことが分からなくなった』

ということなんだろうか




もしそうなら

望むことが矛盾していて

帰省から戻った今も

なかなか消化出来ずにいる