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ふるさとの 花のものいふ 世なりせば いかに昔の 
ことをとはまし            

                   出羽弁


(ふるさとの はなのものいう よなりせば いかに

 むかしの ことをとわまし)

意味・・昔なじみの世尊寺の桃の花がもしも物を言う時世
    であったら、いろんな昔の事を尋ねもするだろう
    に。尋ねることができないで残念です。

 

    詞書は「世尊寺の桃の花を詠める」です。
    桃の花を見て「桃李不言」を思い出して
    詠んだ歌です。

 

    参考です。

    平家物語に出てくる言葉で、湧き上がる父の思い

    出に涙し、出羽弁の歌とともに語られた漢詩です。

 

    桃李不言 春幾暮、煙霞無跡昔誰栖


    (桃李もの言わず 春いくばくか暮れぬる、煙霞跡

    無し 昔誰ぞ栖む)


     桃や李の花は昔と同じく咲いているが、口はきけ

    ないので 幾たびの春が過ぎたのか尋ねることがで

    きない。霞はたなびいているが跡を残さないので、

    昔ここに誰が住んでいたか知ることもできない。

 

 注・・世尊寺=京都一条にある寺。桃園があった。
    桃李不言(とうりふげん)=「桃李物言わざれども
      下(した)自ら渓(みち)を成す」という諺。
      桃や李(すもも)は美しい花を咲かせ、うまい
      実を結ぶので、何も言わなくても人が集まっ
      て自然に小道が出来る。同様に徳のある立派
      な人のもとに招かなくても人が慕い寄って来
      るということ。

    

作者・・ 出羽弁=いでばのべん。生没年未詳。出羽守の娘

    で1010年頃の女性。

 

出典・・後拾遺和歌集・130。