梓弓 春の山べを 越えくれば 道もさりあへず
花ぞ散りける 紀貫之
(あずさゆみ はるのやまべを こえくれば みちも さりあえず はなぞちりける) 詞書・・志賀峠越えの途中で、大勢の女性たちに 逢った時に、彼女たちに詠んで贈った歌。 意味・・のどかな春の山路を越えて来たら、道を よけて通ることも出来ないほど、花が散 っています。 山中の狭い道で行き合った美しい衣装を 着た女性の一群を、その時散りかかって
いた桜の花にたとえて詠んだ歌です。
注・・梓弓=春の枕詞。 さりあへず=避り敢へず。避けられない。 作者・・紀貫之=きのつらゆき。872年生。古今 和歌集の撰者。「土佐日記」を書く。
出典・・古今和歌集・115。 |