トシカレ本編に繋がるお話、裏側。
本編後半のあのシーンの裏側が見られます。

小島と樹とないとーさん。


※彼らそれぞれの目線です。

 



2017年5月


ないとーside


しばらくぶりに事務所に来た。

仕事で来たわけだけど、ふと社員達の動きが気になった。


あ、そうか。
年度変わって1ヶ月は経ったし、研修で先輩について仕事を覚えてる、というところだろうか。

新卒者であろう若い社員が多く見られた。


あれ?てことは、その中のどこかに小島くんがいるはず…



気になって周りを見渡してみるけど、見当たらない。今ここにはいないってことだろうか…


渋「ないとーはこの後帰るの??」

な「え、あぁ帰るつもりではいるんだけど…」

渋「??」



小島くんに会えるなら会いたいな、と思っていた。


な「今新卒者に声をかけたら迷惑かな??(笑)」

渋「うーん、まあ仕事中ではあるからね」

な「小島くんに会いたいなー、なんて思ったり」

渋「小島…あー、内定者懇親会の時にいた知り合いのこと??」

な「そうー」



今ここにはいないってことは、何か打ち合わせの手伝いとかその辺だろうか。

たしかさっき水溜りボンドの2人とすれ違った時に打ち合わせだって言ってたし、そこにでもいるのかもしれない。


まあ帰って動画編集するくらいだから、渋谷と休憩がてらソファに座って待っていた。



渋「その小島くんとはどういう関係なの??」

な「妹の部活の後輩なんだって。弟も同じ高校だけど部活は違うのね。でも、なんでか仲がいい(笑)」

渋「へぇー、まあ都内に住んでればそういうこともあるか…世間は狭いってやつか」

な「懇親会に遊びに行ってよかったです(笑)」




しばらく小島くんについて渋谷と雑談する。

と言っても、2回くらいしか会ったことないし、情報も樹が紹介したいからと会わせてくれた時の情報しかないけど(笑)



少しすると水溜りの2人が会議室から出てきた。

その奥に大柄な濃い顔のイケメンが見えた。
彼だ、小島くんだ。

ガタイのいいトミーと並んでも、10センチくらい身長差があるし、彼のスタイルの良さがよく分かる。


カ「あー、おるたなさんじゃないっすかぁ〜」


カンタがそう声をかけてきて、小島くんは俺に気づいたっぽかった。軽く会釈をしてきた。


ト「あれ、ビバくんおるたなさんと知り合いなんですか??」

健「ええまあ」

な「なにビバくんって(笑)」


どうやら小島くんは水溜りボンドのバディのバディ(マネージャーのさらにマネージャー的な)になるらしく、メンバー・スタッフ間での愛称を決めた時に「ビバ」で、と言ったらしい(笑)
普通に健ちゃんでもいいのに(笑)



な「会えるかなー、と思って待ってた!」

健「どうも…」

な「ってことでちょっと小島くん借りていい??」



仕事中なのは分かっているけど、他のクリエイターのバディとなれば事務所で会う機会もそんなに多いとは限らない。

少しばかり話したいことがあって。



「あんまり拘束しないでくださいね〜。健ちゃん、次はあっちのデスクにいるから終わったら来てー」

健「分かりました」


そう言って出てきた会議室に小島くんと入り、2人きりになった。



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小島side



健「なんですか、急に。会うだけなら別に今じゃなくても」

な「まあそうなんだけど、ふと思い立って(笑)」


ないとーさんとの共通の話題といえばさくらさんと樹くんのこと。何か進展でもあったんだろうか…



健「え、樹くんのことですか?」

な「うん、ちょっと諸事情でLINE作り直したから、連絡取れてないんじゃないかなーって」

健「そうですね…。いくら送っても返事がない、とは思ってましたけど、やっぱり作り直してたんですね」

な「いくら送ってもってことは、連絡取ろうとしてたんだね。何か聞きたいこととか、会おうとしてたとか??」

健「そうですね、だいたいそんなところです。」



それに気づいたのは2年前の秋頃だった気がする。

久しぶりに会いたいな、と思ってLINEを送ったけど、1日経っても1ヶ月経っても既読がつかなくて。
樹くんが未読無視するような子だとは思っていなかったから、LINEを作り直したかもしれない、という考えには至ってた。

作り直しても電話番号で繋がっていればLINE側で友達になりますか、と勧めてくれるんだけど、そこは繋がってなかったからそんなこともなく。


末澤にもさくらさんにも連絡しないのに、樹くんとも疎遠になったのなら、もう諦めるしかない、と思っていた。


ダメ元で受けたuuumに内定が決まり、お兄さんと会えた時は嬉しかった。これでまた繋がれる糸口ができた、…と。



な「どうする??樹のLINE教える??」

健「…そうですね、久しぶりに会いたいですし」

な「じゃあ俺のLINE教えるから、あとで送るね。今ケータイ持ってる??」

健「ロッカーのところに置いてきちゃいました…」

な「あらあら、真面目だこと。紙とペンあるなら貸して、俺のID教えるから、そこから経由」

健「はいこれ」


付箋とペンを貸してIDを教えてもらう。
これでやっと樹くんと連絡が取れる。


な「さくらの連絡先も教える??」

健「あ、いや…」


さくらさんの連絡先はやめとこう、と思ってた。

末澤と付き合ってるだろうから、また繋がったら余計なことをしかねない。繋がるなら末澤と別れた後にしようと思ってた。


理由を話してないとーさんに断った。



な「まあー…そうだね。なんか前に樹から聞いた話だと、末澤くんが散々束縛してるっていうらしいからね…。同棲解消してからはどうなったんだか知らないけど…」

健「やっぱりそうですか…」



まだ丈くんと付き合ってた頃に、食堂で毎日毎日監視してたくらいだ。付き合い始めた頃の裏工作の話だって知ってる。

同棲してる家で束縛されすぎて、同棲解消したってところだろう。

それでも別れないっていうんだから、俺の望みは低い…。俺もいい加減諦めればいいのに…



な「…仕事中にごめんね!あとで樹のLINE送るから、2人仲良く(笑)」

健「ありがとうございます」



2人で会議室を一緒に出ると、俺はさっき言われた上司のデスクの方に向かった。


そのうち樹くんとご飯行きたいな、色々話聞きたい。


樹くんのことを考えながらも仕事に取り組んでいた。久しぶりの樹くん、楽しみだな…。



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小島side


連絡先を教えて貰って2人で会う日を決めた。

5月も後半に入る頃、ようやく2人の予定が合ってご飯に行くことになった。



2人で居酒屋に入る。



樹「相変わらずいい男ですね(笑)」

健「樹くんだってイケメンに磨きがかかってるじゃないか」


会っていきなりの会話がこれだ(笑)


何年ぶりだろうか、大人の顔つきになってきた樹くんは、大人な不良感が出てきた気がする(笑)細すぎて顔が痩けてるから、その感じが消えないんだろう。

俺は樹くん曰く、あと数年したら幼さが抜けてオトコの顔になるんじゃないか、と。


というか俺らは2人して何の話をしてるんだ(笑)




樹くんはピーチサワーを少しずつ飲んでいた。

普段からそんなに飲まないから弱いのを少しずつでいいらしい、とのことで。


本当に見た目と中身が合わない子だ、可愛いな(笑)




樹「完全にねーちゃんのこと諦めた訳じゃないんですね」

健「そうだね、じゃなきゃuuumなんて受けないよ」

樹「同棲解消してからはどうなったか俺でもわかんないですけど」

健「連絡取ってないの??」

樹「あー…えっとですね…」



樹くんが口ごもったので、どうしたのかと色々聞くと、作り直したLINEはさくらさんに教えてない、と。

同棲解消してケータイチェックされる頻度は減ったとはいえ、下手にLINEも送れないのなら教える必要もないから、2人が別れるまで手出しはしない、と。


樹「もし、どこかで再会したとしても色々ばらさないでくださいね。俺から聞いた、ってのが嫌だと思うんで。兄ちゃんにも口止めしてあります。知らないフリしてください…」


まあ同棲解消をしたのは、別れる1歩手前だと思ってる。でも、それから1年は経ってる。
別れるのは時間の問題なのか、むしろ逆に離れて仲良くなってたりしてるかもしれない。

とにかく、2人が別れるまでは手出しは出来ない、と。


健「そもそもなんで作り直したの??まあそういう子いるよね、何か事情があってLINE作り直しちゃう子。大学の時もよくいたよ、突然消息絶つ子。

俺ね、大学では一応軽音サークル入ってたんだけど、突然連絡取れなくなってライブすらすっぽかす子がいたんだよね。あーいうの大迷惑。要はドタキャンだよね。社会人としてやっていけないよ、彼らは。俺がバンドリーダーだった時とか、もう大変だったよ…。

約束事放棄して連絡絶つのは社会人としてはよくないよね。こっちからしたら連絡取れなくなる事情は知らないけどさ…」


お酒も入っていたし、大学時代の愚痴話になってしまった。

樹くんは、そんな話を聞いて渋い顔をしてた。



樹「俺もその部類ですかね…??
ケータイのバックアップ取ってない状態でケータイ壊れて、誰とも連絡取れなくなっちゃって」

健「ん…まあどうしてもの用事とかで、ケータイ以外に連絡手段があれば、そっちを頼るけど、そこまですることじゃなかったからサークルの時は結局代理を立ててたんだけど…。
樹くんも誰かと約束事あったんなら、心配して探してくれてる子がいたかもしれないね」

樹「たぶん…いたと思う。あいつなら、あいつらなら…」



親友なら絶対いつか探しに来てくれる、そう言ってた。

ケータイが壊れた当時、お兄さんのTwitter伝いに樹のことを探してくれる子はいたらしい。


割と最近、もし連絡取れるならその子と繋がりたい、と頼んだらしいけど、その頃にはその子も就職しだした時期で、アカウントが削除済になっていた、と。
おそらく彼もTwitter作り直したか、完全にTwitterを辞めちゃったかのどちらかだろう。



樹「あぁ、たしか小島くんなら知ってるはず。北斗くんです、松村北斗くん。」

健「あ、北斗くんなの??そのお兄さん伝いに探しに来てくれた子」

樹「2年生の時ですかね??北斗くんと同じクラスだったらしいですしね」

健「そっか、そういえば彼もバスケ部だったな…」

樹「北斗くんとも連絡取れないなら、もう完全に親友と繋がる手段がなくて…。兄ちゃん伝いに会いに来てくれるか他の手段で来てくれるしかないです…」



自分からアクション起こす気力すら今はない、と。
たしかに就活で疲れている顔はしている。

それでそんなに細いのか…??
にしても、まだ就活も始まったばかりでしょ(笑)



樹「兄ちゃんにもねーちゃんにもあんまり会わない今、大晴が俺の癒しですね…。でも今受験生だから、邪魔しないでおこうって」

健「さらに下の弟くんだっけ??受験生ってことは高3??」

樹「そうですね、高3です」

健「まだ高3か、若いねー(笑)」



さっきから俺の方から一方的に質問したり、話したりしている。樹くんはあんまり元気がないように感じる。


健「就活疲れ??」

樹「そうですねー(笑)あとバイトもしないと金ないですし、兄弟全員と親友に構って貰えない今、1番辛いです(泣)」

健「痩せたでしょ、頬が痩けてる。不健康そう」

樹「今史上最大に体重減ってます…」

健「ちゃんと食べな、ほら、このチャーハンあげるから」

樹「味濃いチャーハン好きじゃねえっす」

健「ええぇぇ」



思えばさっきからサラダとかさっぱりしたものしか食べていない。

元から食は細いですよ、と。

あの翔太くんと同じだな…
ある程度身長あるのに痩せてるから不健康そうに見える。ひょろひょろの痩せ型…



樹「お酒もまだまだ甘いのしか飲めないです、桃がいい、桃が好き(笑)」

健「俺ら1つしか違わないのに味覚が大人と子供だな(笑)」

樹「ほんと(笑)」


日本酒や焼酎が好きな俺とは正反対だ。



樹「…小島くんはなんでuuumに行ったんですか?兄ちゃんがいるから??」


就活の話をしたいんだろうか。
まあ終わったばかりの先輩がいるんだ、話は聞きたいだろうな…


健「…そうだね、お兄さんがいるの分かってて受けた。
樹くんってどの業界狙ってるの??よければ就活の話聞くよ??」


やっぱり就活で悩んでいるんだろう、砦が崩れたように話し出した。


丈くんが目指してたからって理由だけで選んだ大学と学部。特にやりたいこともないからサークルも入らず遊んでて、その延長で2年の夏にやらかしてケータイ壊れたから、一度都内から姿を消して地方で短期バイトで生活。

東京に戻ってきてからはガソリンスタンドのバイトを始めてそこからほぼバイト三昧。なんでも地方でお世話になった人にケータイ代から色々とお金を返したいから、とずっと働いていたらしい。

そして4年生になって就活が始まり今に至る…と。
ガソリンスタンドのバイトだって、自分が働ける労働条件で家から近いところで働いていたみたいだし、話を聞く限り、計画的に動いているようには見えない。

別にそれが悪いとかじゃないけど…



樹「とりあえず給料情報見て良さげなところ受けてるだけですね、なにがやりたいかよく分からない。」

健「それがダメなんじゃない?ちゃんと自分に何が出来るか、何がしたいか決めてから動きな。とりあえず受けてるだけじゃ労力の無駄。」

樹「やっぱりぃ…???」



樹くんの悩みはそれなんだろうな…

痛いところをつかれたようで完全に落ち込んでしまった…



さっきの話と併せて考えると、きっと誰にも相談できなくて1人で抱え込んでいるんだろう。

ないとーさんなんて論外だ。
1社だけ受けて落ちて、その後は就活しなかったらしいから…



樹「小島くんは、俺に何の仕事が向いてると思います…??」

健「他己分析ってやつか」

樹「そうですねー…」

健「うーん、そうだな…」



昔から見てきた感じでは、人の為に動く子なんだな、とは感じている。

お姉さんのことが大好きで、幸せになってほしくて、その為に色々動いたり俺に報告してきたり

大好きな丈くんが亡くなって、叶えられなかったことを叶えてあげたい、と志望してた大学に進学したり

自分のために何かしてるんだろうか…



健「樹くんってさ、趣味はないの?」

樹「趣味??…特には」

健「何してる時が幸せなの??」

樹「うーん…好きな人と一緒にいる時?」

健「え、好きな人いるの?まさか彼女???」

樹「いや、大晴とねーちゃんです。あと親友の大橋くらい」

健「お兄さんは???(笑)」

樹「とっくの昔に家を出たので冷めました」

健「ははは(笑)」



人の為に役立つ仕事、そんなの世の中溢れている。

その中で興味のある仕事に就ければいいんじゃないかな???



健「そういえば資格は持ってないの?免許は??」

樹「就活さっさと終わらせて教習所通うつもりです」

健「その考えも辞めたら?焦っても無駄だよ、変な会社に当たるだけだ」

樹「全てにおいて子供ですかおれは…」

健「…そうだね、否定したいけど出来ないな。

とりあえず、俺が思うに樹くんは人の為に動ける子なのかな、と思う。だから人の役立つ仕事とか向いてるんじゃない??

ネットに転がってる適職診断とか受けてみたら??あれ結構参考になるよ??

あと給料情報もいいけど、ちゃんと福利厚生面見ときな。入ってから文句言っても遅いから。そういうのはちゃんと書いてあるもんだから、自分で外せない条件はちゃんと見ておくこと。


大丈夫、そうやって見ていけば絶対就職出来るところあるんだから。2年勉強頑張って青学入れたんだし、人の為にあれだけ動ける樹くんなら出来る。
就活は自分の為にあるんだし、頑張れ。樹くんなら出来る」


樹「ありがとうございます…」



弱気な樹くんなんて似合わない。
焦りは禁物とは言ったけど、樹くんなら早く内定決まりそう。

まだ5月、俺だって決まったのは秋だったし、大丈夫だ。



樹「そうだ、全然話違いますけど、北斗くんと今江くんの連絡先知らないですか??」

健「今江くんもバスケ部??」

樹「はい、2人とも小島くんと同い年ですからね」

健「今江くんとは3年の時同じクラスだったけど…なかったと思う。一応見てみるけど…」



ケータイを見てみるけど、同じクラスだっただけだし、何もなかった。

聞くところによると、2人はチームfunkyという仲良し組のメンバーだということで…



樹「そっか…ありがとうございます。」

健「みんなに会いたいのか…」

樹「同い年の淳弥と蓮くんなら大学行けば、大橋も事務所行けば会えるかもしれないですけど、そこまでする勇気はないです。だったら何かのきっかけがあるまで待つ…」

健「…1人で抱え込みすぎないでね?なんかあればまた相談乗るから…」

樹「ありがとうございます…」



久しぶりに会った樹くんは随分と弱くなっていた。

2年前の連絡先大紛失がだいぶ痛手なんだろうな…


どうか病まずにちゃんと就職決まって欲しい。



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樹side


小島くんに就活のアドバイスを貰って、適職診断と親と大晴に他己分析してもらった結果、旅行関係の業界に絞ることにした。

親は2人とも専門職だから限られた業界の就活しかしていないし、ねーちゃんは出版社に就職する、という明確な目標があったからそれに合わせて大学選んでたし。



別に今の大学、学部には後悔していない。

丈くんがいたから、本気で丈くんの叶えられなかったことを叶えてあげたくて、意地でも入ってやろう、と勉強してたわけで。


入ったらその目的を達成してしまい、遊んでしまった。その延長で2年前のあの件があって、てつやさん達にお世話になって、そのお金を返すためと自分のためにバイトして。

その日暮らしもいいところだ。
先なんて全然見てなかった。



だったら、その日暮らしといっても、旅行という限られた日数を楽しんで欲しい、と思って旅行関係の仕事に就こうと思った。

小島くんが「人の為に動ける子」って言ってくれたおかげ。


あとは大晴が大学合格したら、お兄ちゃんが働き出してから、お兄ちゃんのプレゼンで旅行行きたい、って言ってくれたから。しかも2人で行こうって。

そんなこと言ってくれるなんて思ってなかったから、嬉しくて、大晴の前で泣いてしまった。
どっちが兄貴だか分かんねーよ、大晴、本当お前は可愛い弟だ。








就職してからは、小柳津という丈くんにそっくりな奴に出会った。

なかなかドSだけど、いい奴。
大橋が傍にいなかったから、彼が俺とよく一緒にいてくれた。

やっぱり俺は誰かと一緒じゃないとダメかもしれない。




大晴との旅行は、年度が変わる少し前の2月に、一緒にスノボやりにいった。大学にも慣れてくる頃でもあり、長期休みの時期がいい、と言ってたから。
俺も、ボーナス入ってからだったり、有給使える時期がよかったからその頃になったわけで。

普通に国内。お兄ちゃんと一緒ならどこでもいいって、言ってくれた。


本当可愛い弟だ。






でも、旅行から帰ってきてからは独立することを考えていた。

兄ちゃんもねーちゃんも独立して大人になっていってるのに、大晴に甘えてばっかりでもダメだな…と思って。





新年度になって少し落ち着く5月頃に高円寺に引っ越した。

広いと寂しいからわざと狭い1Kにした。



最初は本気で寂しくて死にそうなくらいになってたけど、近くに猫カフェを見つけたから定期的に通って癒されてた。ペット禁止だから飼えなくて…

家に1人、寂しいとか言ってないで耐える、慣れる。

必死に独立しようと頑張ってた。





そしてあの日、ねーちゃんが相談しに来たあの日。

ねーちゃんが小島くんに結婚申し込まれたけど、寺西さんとも別れてない、と言ってきた。

知り合いに相談して、小島くんのところに行こう、結婚しよう、と決めたはいいものの、まだまだ気持ちがブレていて、寺西さんを振るのが怖い…と。


なんだそれ、浮気じゃねーか。

ていうかどっちが先に付き合ったんだ、小島くんが先だったら許さねえぞ…



っていうか


樹「贅沢な悩みだな!!俺は独り身だぞ!!」
さ「そんな意見求めてません!!!」


俺は1人で寂しい思いしてんだ、贅沢な悩みだな!!!



樹「どっちが先に付き合ったの」
さ「拓人、告白現場は健に見られたんだけど」
樹「は???」
さ「告白された時にキスされたの目撃された…」
樹「あんたらどこでデートしてたんだよ…」
さ「六本木」
樹「…マジか」


小島くんが先じゃなかっただけまだよかったものの、デートする場所があれだな…

uuumに勤めてるって知らなかったのか…???


さ「なに、マジか…って。」
樹「小島くんの仕事知らなかったの??」
さ「連載始まるまで知らなかった、むしろなんで樹が知ってるの?」
樹「兄ちゃんが繋げてくれた」
さ「え、じゃあ私と小島くんが再会したのは…」
樹「聞いた。LINEで聞いた。たしかあれは7月の半ばくらいだったような…」
さ「再会して即報告…??」
樹「え、そうなの??」




8月のお盆の時は、誠也くんと別れて新しい彼氏がいる、と言う言い方をしていた。


身内は誰も寺西さんの存在を知らない。
小島くんのことも、兄ちゃんと俺くらいしか知らなかったから、俺らはお盆の時に付き合ってたのが小島くんだと思ってしまっていた。

小島くんだったら、付き合うことになったのなら言ってくるだろう、と思っていたけど、今の今まで何も来なかった。

ということは、お盆の時点ではまだまだ寺西さんと付き合ってた段階で、きっとその後uuumにねーちゃんが出入りするようになってから結婚申し込んだんだと思う。


ちょっと、小島くん、いくら好きだからって強引すぎませんか???(笑)
しかも勝負って、浮気させてるし、そりゃねーちゃんも困りますよ(笑)



樹「丈くんのところにでも行ったら」
さ「なに、死ねって言うの?」
樹「そうじゃない。嘘です、冗談、スミマセン」
さ「お兄ちゃんいたら冗談でも言うなってキレられるよ。」
樹「デスヨネ、言いすぎました。スミマセン。」


これは叶うならば、の話なんだけど、完全に俺が調子乗った。

亡くなっていなければ、1番結婚しそうなカップルではあったからな…

俺もそれは望んでた。

ねーちゃんには別の意味で捉えられてしまったけど(笑)




樹「…そっか、なんで迷うのか分かった気がする。」

さ「え??」

樹「ねーちゃん、振った後のこと考えてるだろ。
今後の一生かかってるのに、振った後のこと気にしてどーすんの。そんなのなるようになるしかないだろ。ねーちゃんが好きな方に行けばいい。」


これはねーちゃんの気持ちが完全ではないにしろ、大方小島くんに傾いているから言ったわけで。

そりゃ小島くんの方に行くと、会社での問題が多く残るんだけど。

でも、そんな理由で小島くんのことを振って欲しくなかった。




2回も振られてるのに、誠也くんと喧嘩までして怪我までして、それでも諦められなくてuuumに入ってまでして、ねーちゃんのことを想ってるんだ。

あの人の一途さは伊達じゃない。



樹「1回答えでたならそれでいいじゃん。なんで迷うの。もう答えの方に人生預けちゃいなよ。俺は、どっちに向いても応援する、ねーちゃん泣かせたら俺がボコりに行く。これでどうだ!!!」


寺西さんはよく知らないけど、まあ誠也くんよりはマシだと思う。小島くんもさすがに不倫まではしないと思うし、結婚してしまったらさすがに諦めると思う。

でも、小島くんが高校の頃から好きなのを知っていて、ねーちゃんがその小島くんを振ってしまうような人ではないことくらい、俺が1番知っている。


俺流の背中の押し方だ。

元々は俺が一番最初にねーちゃんに恋してしまっている。

俺の納得していない相手なんかと結婚させたくないからな。






挨拶に来たのが小島くんで安心した。

LINEでも報告してきたからな。
プロポーズしたよって、色々ありがとうって言ってきてくれた。



仲のいい先輩から、義兄さんへと変わった。

よかった、これで小島くんとずっと一緒にいられる。



ありがとう小島くん、ねーちゃんのこと一生よろしくお願いします。