宙組「神々の土地」、観てまいりました。
(以下、若干のネタばれあり。)

一言でまとめると・・・
「佳い作品」ですな。

ウエクミ風味は変化球に進化。
退団公演臭は少なめ。

しっとりじんわりとした味わいのある舞台でした。

上田久美子先生といえば、身分違いの悲恋を劇的に盛り上げ、悲壮感漂う美しいラストで涙を誘う・・・のが定石。

今作品は、進む道の違いを認めあって別れを選択するという、情感あふれる切ない恋物語でございました。
根底に、繊細さと抑制の効いた激しさが秘められていて、そこがウエクミ先生らしい。

革命とかラスプーチン暗殺は、多少描ききれない感じも。一時間半では仕方ないですよね。
史実を上手く利用していましたが・・・結局、タカラヅカだから、美しいラブロマンスが記憶に残ればいいのですわ❤。

ただねぇ・・・
ここで終われば余韻が残っていいのに・・・という後に、後日談的な部分があって(←ここが退団公演仕様のフィナーレ的部分かな)・・・ワタシ的にはちょいと余計だったかなぁ、と(^^ゞ。

セットがゴージャスで、重厚感たっぷり。厳かさがあって、フランス宮廷ものとは全然違う雰囲気でした。
豪華さのなかに、そこはかとなく「滅びの予兆」を感じたのは気のせいかな?(笑)。

大階段を上手く使った演出が素晴らしかった。
特にラスプーチン暗殺の場面が圧巻。
皇后の影に必ずいるラスプーチンの存在を暗示したり、皇后のドレスの裾の乱れ具合で混乱具合を表したり。
見せ方がとても魅力的でした。

朝夏まなとのドミトリーは複雑な難しいお役ですね。
まあ様は繊細でやや抑え気味のお芝居。深い感情がにじみ出ていました。
ラスプーチン暗殺に反対しながら、暴動で知り合いを殺さざるをえなかったことによって現実を知り、やっぱり暗殺しちゃう・・・その心境の変化を一瞬で表現する場面は、流石でした!。
罪を認めて死を覚悟して戦地へ赴く・・・。それは愛する人との別れ。然り気無い会話の中に深い想い、愛情がこめられていました。いい余韻のあるとーっても美しい場面でした。嗚呼じんわり〜、いいなぁ〜。
(ただ・・・この後は生き延びちゃうのよね。説得力が一気に低下よ〜(笑)。史実だから仕方ないけど。)


伶美うららが、文句無しに「トップ娘」でした。
綺麗で堂々としていて、しっとり情感があって貫禄充分。
この舞台はうららのイリナでカラーが決まる、といっても過言ではない位。
役まわりも美しい生きざまでした。
ドイツから嫁いできた身でありながら、貴族の一員としてロシアに対して責任がある、それ故革命から逃げない、と。
その結末は、獄死。
すみません、主役ドミトリーよりもイリナに感動しちゃいました。
(実在の女性“エリザベータ”がモデルなのですね。アレクサンドラ皇后の姉です。)
“称号”はなくとも、伶美うららは立派な「トップ娘役」でしたよ。

ドミトリーもイリナも、それぞれが自分の信じる方法でロシアを愛し守ろうとした・・・ロシア=宙組、に重なるのでしょう。

組長マリア皇太后の「ロシアは誰のものでもない。そこを愛した人々のものである」(大まかな意味)の台詞がずしーんと深く心に響きました。

退団臭は少ないとはいえ、トップ「コンビ」の退団公演なのねぇ・・・としみじみ思ったわ。

真風涼帆はフェリックスを好演。押しが強くて自分優先?の、貴族よりも絶対実業家が似合うタイプ。でも嫌なヤツではないの。おとしどころの難しい役なのでは?。
セリフや歌詞がはっきりしない部分があったけど・・・マイクの加減のせいかな?。
毎回思うけど・・・「男!」にしか見えないんだよねぇ。男役として素晴らしい魅力ですね。

星風まどかちゃん、細くなった?(失礼m(__)m)。
気高い皇女というより、女学生に見えちゃいました(スミマセン)。。。童顔だからかな?。
「お姫様」は意外と難しい・・・。
お芝居、役作りはまだまだのびしろがありそうです。
歌は声がとっても綺麗!。

愛月ひかるは・・・うーん。
ラスプーチンの「怪」僧を強調するも、その本質が、狂気なのか、反骨なのか、革命派なのか・・・ちとわからんかった。
大袈裟な怪演という「型」はいらない、と思うんだがなあ。。。もっと、ずどーんとした部分で見せて欲しい。

ラスプーチンは凄く重要な役まわり。民衆から疎まれているようで、民衆と同じ側に立ってるようでもあり・・・。
ラスプーチンの在り方で、物語の見え方も少し変わってくる・・・ように思います。

組長・寿つかさ氏が、本格的女役!。マリア皇太后という権力者。
男役のままの、女役でした(笑)。←誉めてます。
威厳、存在感、味わい深さ・・・ベテランの実力者じゃないと出来ない。良いモノを見せて頂きました。

桜木みなとは、ゾバールという革命派の若者。ダンスが凄かった(あ、ダンサー役なのね)。
粗野でワイルド、スケール感があって良かった。
最初のうちの役割ポジションが不明で・・・なんとなくその他大勢のうちの一人、みたいな風に見えちゃってたのが残念。
要の役なのに、それがわかりにくいのが原因かな。

純矢ちとせ、美風舞良のベテラン娘が頑張ってました。
二人とも、さりげなく状況や背景を説明したり、雰囲気をつくったりする重要な役目。
冒頭のモブ芝居も、この二人でなんとか引っ張っていました。時代背景と状況の説明も兼ねた重要な場面なんだけど・・・馴染みのない時代のせいか?、今ひとつわかりにくかった。
うーん。場面を作りきれてない感じも。。。
(同行した知人もよく分からなかった、と言っていました)

「時代物」「貴族もの」の難しさ、もあるのかもなぁ。。。

それと・・・ちらと思ったのが、これから真ん中を支える「主要脇役が勤まる若手娘役さん」の育成が急務なのではないでしょうか。。。

私が観劇したのは、東京2日め。
全体的には、まだまだ試運転(笑)ぽかった。
これから本格的にエンジンがかかってくると思います❗。