頼んだパスタを運んできたのはチャンミンで、
俺が口を開く前にイトゥクが声を掛ける
「なぁ、恋人なんだろ?」
「そうですよ」
にっこりと微笑む美しい俺の恋人。
品があって、どこか幼くて、こんな笑顔できるやつ世界中探したってチャンミンしかいない。
「恥ずかしがらないところがいいねぇ…ユノのこと幸せにしてやってください」
けらけらと笑うイトゥクに「お前は俺の保護者か?」とツッコむが
「もちろんです」
チャンミンは真面目な顔でそういった。
「彼は恋人であり恩人だ。この恩は僕の一生を捧げてでも返しますよ」
ふわり、と微笑む彼を
どれだけ抱きしめたいと思っただろうか
こんな、こんなこと簡単に笑顔で言えるお前はきっと俺より男前でさぞかし女の子にモテるのだろう
"一生を捧げてでも"
ドラマでしか聞かないような言葉に胸が高まる。
聞いておいてイトゥクもこの困ったようなニヤケ顔
「チャンミン…よくそんなキザなこと言えるなぁ」
「キザな街ですから」
チャンミンお馴染みの街のせい。
どれだけどっぷり飲み込まれたらそんな風になるんだよと心の中で叫んだ。
「ではまた」と他のテーブルの方へ行ってしまったチャンミンをぼー、と見つめる。
美しい俺の恋人
宝石のような彼を手に入れた俺はきっと前世で革命でも起こしたに違いない。
チャンミンを眺めているとイトゥクが
「おい、お前どんな手口使ったんだよ…」
「人聞き悪いこと言うなよ……俺何にもしてない」
そう、何にもしてないのだ。
ふと疑問に思った。
家に泊めてやってはいるけど、一生を捧げてでも返したい恩はそんなことじゃないだろう…?
チャンミンが何のことを言っているのかわからなかった。
「たった数週間であんな惚れさせるとはねえ…やっぱりユノさんやり手だわ」
「俺から惚れたんだって」
「一目惚れ、だっけ?」
「うん…最初は滅茶苦茶嫌われてたけど」
思い返せばすごく昔のことのようで懐かしく感じるが、まだ数週間前の真新しい出来事で
この街に来て時間感覚がおかしくなったのかと不安になる。
やっと口にしたパスタは、やっぱりチャンミンの作るパスタの味はしなくて分かってはいたけれど少し残念だ。
まぁ普通に美味い。
家事ができるんだから厨房で働けばいいのに。
接客なんて、あの笑顔をいろんな奴に見せることになるじゃん…
チャンミンにみんな惚れちゃうじゃん!
案の定
女性二人の席に注文を取りに行ったチャンミンは足止めされていて
二人とも明らかにチャンミンの美貌に虜になっている。
そりゃ、そりゃわかるけど…
俺だってそうだったんだけど
今は俺のものであって、彼女達に取られるわけにはいかない。
もう見てられねえ!そう思い
ガタン、と席をたてば
「接客の邪魔だ」
とイトゥクから無理やり座らせられる。
「でも……」
恋人として心配なんだよ!!お願いだから目移りしないで欲しい……
「女々しいことしてたらお前があいつに喰われるぞ」
イトゥクのそんなからかいも気にならないほど
俺は三人の会話に集中した。
というか、店員に話しかけるなんて業務妨害だから!!
俺以外は禁止って張り紙貼っとけよ…
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