映画『銀河鉄道の父』を観て
画像>パンフ
配役が素晴らしいので神川町中央公民館まで車飛ばして見に行った。
親ばかの宮沢賢治の父に役所広司、一生をロマンチストとして生きた
宮沢賢治に菅田将暉、兄の才能を信じ、日本のアンデルセンを切望した妹トシに
森七菜。その祖父に田中泯,大正期前後盛岡ブルジョワ、宮沢質屋一家の
ハートフルでファミリー愛に満ちた映画だった。
今まで宮沢賢治は彼の作品を通して描かれていて、生い立ち等について追及した作品は少なかったように思う。「銀河鉄道の父」
はそのまま「風の又三郎の父」でも「風にも負けずの父」でもいいような、宮沢賢治の父や家族から見た
宮沢賢治の人物像である。原作は門井慶喜である。親の権力が絶対であった時代
稼業の質屋を真摯に受け継ぐ意志も薄く、人造宝石で儲けようとしたり、
宗教に狂信的に凝ったり、一途な青年の生きざまを描く。けたたましく太鼓を
叩いて題目を唱える姿は何かに取りつかれたようである。そこを菅田将暉が見事なりきって演じていた。それをやさしく包む父親
役所広司が彼ならではの
ヒューマニーティが素晴らしい。世の中の価値観が西欧化する時代、
生活に困らないで育ったブルジョワの子供によくある姿を映画は描いている。
理想主義のトルストイやツルゲーネフにかぶれ、現実が見えにくくなっている、そんな道に迷った我が子を古い教えの子育てか
ら、脱皮して見守ったのが新しい父親像の役所広司である。娘のトシ亡き後(結核)、生きたいようにやらせた
大正期前後には少ない父子関係である。まさかブルジョワの中では長男後継優先の時代であるから、映画の中だけの創作としか思
えない。宮沢賢治が祖父の別荘、妹が結核療養で過ごしていた別邸で物書きに専念していたなんて、初めて聞く。今まで読んだ宮
沢賢治の人生は働きずくめで、農民の救済もやったが、
生活難で亡くなり、彼の死後色々童話や詩の断片(風にも負けず)が出て来て、それを発表してくれる仲間がいた。宮沢賢治はず
っと孤高でひとりよがりな
人だった印象が強い。それを覆す点では立派な出来栄えであった。原作に脚本がどれだけ忠実であったかは分からない
が・・・・。
『銀河鉄道の父』は賢治をそこまでその気にさせた、兄の才能を信じて疑わなかった,早世して無念だった妹トシであり、それを
引き継いで創作意欲を盛り立てた父親の強い献身が賢治を世に残す結果になったと思う。これは本人取っても家族にとっても、賢
治ファンにとっても喜ばしい結末になった。日本だけでなく世界にも宮沢賢治ワールドに魅せられた読者は沢山いるからだ。
大部分の有能な資質・芸術性は陽の目を見ないで藻屑と化すのが通例だが
その点宮沢賢治は恵まれていた。賢治は勿論だがその家族に対しても包容に感謝したい。車で一時間かけて来た価値は十分あ
った。
動画・予告編

