映画「PLAN75」を観て
なんて身につまされる悲惨な映画を観てしまったんだと後悔した。SFだろうなと淡々と見ていけば、時は2025年、政府が自らの
安楽死議案を可決したと・・・・・。
しかも75歳から貧しい人、寂しい人、身寄りのない人は国の為、国税のため、若者が
生き易い国作りの為、どんどん死んでいきなさいと推奨した。
78歳でホテルの客室清掃をする主人公ミチ(倍賞千恵子)も同僚が仕事中突然死したものだから、とんだとばっちりを受けて、
解雇となった。貯金もない、アパートも高齢と言うことで再契約も危ない、ミチはついに10万円の支援金を貰って、プラン75と
いう安楽死の選択をする。映画は他に安楽死を事務的に受け付けする人や行政窓口の人、病院で安楽死を進行させる外国人雇用者
など様々な側面から高齢者問題を描写している。ゆくゆくは
プラン75に携わっている若い人も将来、こういう絶望的な未来が来る複雑さも加味して
、映画は殆ど音楽はサイレント、陰影色濃く主役のミチの彫の深くなった顔から手を重く描く。病気でも寝たきりでもアルツハイ
マーでもなく、元気で働く年寄りをある年齢で線引きして国税が掛かるから「プラン75」という法案を通すブラックユーモアは
笑うに笑えない
自分の問題でもある。
画像>ソイレント・グリーン
昔々チャールトン・ヘストン主演の「ソイレント・グリーン」と言う映画を観たが
人口が過剰・環境汚染、人の口に入るものが無くなったら、人間の体を粉々にして
顆粒状にし、残っている人間に食料として配給するSFだった。それが1973年製作で
2022年の出来事として描かれていた。もう我々はソイレント・グリーンを齧って生きている時代にいる。最初はプラン75と同じ
ようにベッドに横たわり、薬を飲んで安らかに昇天していく。「ソイレント・グリーン」では20世紀ころの景色の美しさ
(花々)が画面いっぱいに広がり、名曲が流れる。あの頃の地球は素晴らしかったなと回想しながら永眠していく。
「プラン75」はこの辺はあっけらかんで映画プランは21世紀、脚本は2025年ながら
粗末な病院の寝室で安楽死させられる。夢もチボーもない。ミチの隣で死ぬことを決意した老爺は死後身寄りがないので、遠縁の
プラン75申請窓口のヒロムが死体を引き取りに来て、自分の車に乗せて焼き場に運ぶ。予約もしてないから焼き場へ車から連絡
すると混雑していて4日後になるという。然し今遠いところでキャンセルが出たから、そこなら処分できると・・・。
ヒロムは車を飛ばして急ごうとしたら、見張っていたパトカーのサイレンが鳴って・・・・
ポリスに職務質問「随分スピード出していたね。隣の人は・・・??」
「叔父です」叔父の死体をポリスがどう判断したか、謎で描いていない。巷で若者による老人殺人が多発していたというから、世
間的に大したことじゃなかったかも?映画はミチも
薬が効かなかったのか、立ち上がると病院を出てしまう。夕日を眺めながら映画はエンド。
ミチは死ななかったのか?死ねなかったのか?謎のまま観客に解釈は任せてエンディングとなった。
画像>病院で死ぬのが嫌な老人は自ら命を絶つしかないのか?老人は問いかける。
倍賞千恵子の名演が光る映画。
来年はこの映画の時代設定2025年、そして法案が可決される75歳から安楽死が認められる私の御年が75歳。今元気で働い
ていても、もうすぐ75歳以上の老人が5人に一人の割合になる。国税を圧迫する未来は近い、と言うかすでに圧迫し続けてい
る。しからば
ハムレットの心境「生きるべきか、死ぬべきか」病もなくアルツハイマーでもなく、健康生活を恙なく送っていても、75歳と言
う区切りで死になさいという法律は戦争に行って
お国の為に奉公しなさいという時代があった過去を繰り返す。嫌な時代の再来だね。
画像>楢山節考を彷彿とさせる映画、姨捨山に老婆をおんぶしていく話。老婆は元気なのが跋悪くわざわざ前歯を折ってその日を
待つ。
動画>プラン75