三作家の事実は小説よりも奇なり―――金谷豊講演
高階文庫お話会はいつもタイトルが面白いのでついつい出席してしまう。
今日は昔「上州路」という群馬の歴史や文化を深く掘り下げた旬刊誌の
編集長だった金谷豊氏の講演なので申し込んでいた国登録有形文化財
「重田家住宅」をロケ地に、座談会をキャンセルして高崎の方へ出向いた。
画像:パンフ>
貰ったレジメには「小説に描かれた事件」―――事実は小説よりも奇なり。
正に人が作る以上に絶妙なティストを放つ。
鈴木光司著「リング」➡明治時代にあった千里眼事件
横溝正史著「八つ墓村」➡昭和13年岡山県津山であった事件
三島由紀夫著「青の時代」➡昭和24年闇金融「光クラブ事件」
3つの小説と事件の関連性について述べられた。
画像:三島由紀夫は自衛隊市谷駐屯地で演説の後、落胆して果てた。劇場型人間で「悲劇役者だが観客は皆笑っている」
と言いつつ・・・・。
3つの内2つはホントにあった悲惨な事件をテーマにしているので、
書くのに心苦しい。先ずは三島由紀夫著「青の時代」
すなわち「光クラブ事件」について書こう。これは現役の東大生が終戦間もない頃高利貸しをして莫大な利益を上げ、や
がて銀座に進出、学生社員を30数名使うまで躍進したが物価統制法や銀行法違反で逮捕され、あっという間に債務が残さ
れ、挙句に主人公が青酸カリで自殺したと言う事件だった。それを三島由紀夫が小説にした。三島と光クラブの山崎晃嗣
とは2つ位違いの東大生で共に秀才、将来を嘱望された人物であったが学業の間に入った戦争に邪魔され、片や三島は虚
弱で軍隊に入れず、片や将校で帰還した後心が荒んで弱者を食い物にする精神が宿った。三島由紀夫は山崎晃嗣を身近に
感じていたのか「青の時代」と言う小説を書いた。
動画:リング>
貞子と言うおどろおどろしい映画で話題になった「リング」もそれを参考にしただろうと言う事件が明治時代にあった。
それが千里眼事件。
透視や念写が出来る女がいると言う東京帝国大学の学者が現れる。今思えばかつて世の中が熱狂したユリ・ゲラースプー
ン曲げ同様、トリックで満ちているのだが、
当時は東大の教授が(福来)実験を繰り返して、新聞社迄が売らんかな精神で
真実だと煽るから、明治時代の人々は熱狂した。まだ科学的なことよりも非科学的なことが信じたい時代だったのかも知
れない。これと「リング」がどういう関係があるかと言えば、作者の鈴木光司がこの事件に強い関心を示し、事件登場人
物に似たような名前を付けていると金谷豊氏が言っている。ここでは敢えて名前は上げないが、映画で貞子が井戸から這
い上がって来るシーンが話題の恐~ろしい所だが小説にはないそうである。念写で作る➡ビデオにした➡ダビングして廻
す➡不幸の手紙に類似➡回さないと死ぬ・・・これも小説にはないようなこと言っていた。「リング」はハリウッドでリ
メイクされて映画になった位だから
それはそれは素晴らしい小説の映像化なんである。
動画:八つ墓村 犯人役を山崎努が演じている>
昭和のバブル期角川映画が笛や太鼓でドンドンパチパチ宣伝して、良く封切りしていたのが横溝正史作:金田一耕助探偵
の探偵映画である。その中の一つ「八つ墓村」は岡山県津山山奥で起こった32人殺しの事件を扱ったものだった。この
事件は
日本が中国へ進出して行った頃で箝口令で事件を伏した。地元民は知っていたが全国にこの事件が知れ渡ったのは戦後の
ことだそうである。
映画で鉢巻きした頭に懐中電灯を2本燈し、2時間の間に22戸の家を襲い、30人の犠牲者を出した、犯人の目的とは何
だったのか❓
現代で大きな無差別殺人事件を起こす犯人と同じ、大人しく、成績は優秀で
目立たない人物であったと言う。21歳で結核で村によくある夜這いに明け暮れていたが、或る時から全面拒否にあう。こ
れを怨みに思っての犯行と言われる。
そう犯行動機を裁判官が述べた。
犯人は冷静に目的を遂げると荒坂峠で夜明けを待ち、自ら心臓を突いて命果てた。この事件は松本清張も扱っているし、
横溝正史の前に片岡千恵蔵でも映画があったらしい。主人公は言わずと知れた金田一耕助だがモデルは劇作家の菊田一夫
と言われる。名前は国語学者の京助から取っているが、何でもかんでも気楽に身近なところで選出している所が横溝正史
らしいのである。横溝正史や赤川次郎などは何十年も書くのを控えてもずっと長者番付が一位を誇ったのは文庫本の売り
上げが貢献した。それ程に文庫本の印税は大きいと言うことですな。


