日本の刺青と英国王室 を読んで

 

2020東京オリンピックで余りに入れ墨スイマーが多かったので、これも世界の趨勢かと入れ墨に関する本を探した。確かに日本でも

 

若者がタトゥを入れるのが流行っているのは知っている。サッカーでもラグビーでも海外アスリートが腕にチラホラ入れ墨が垣間見え

 

ることはあった。―――たまたま面白い入れ墨の本があったのでこれを紹介する。本書には副題がついていて「明治期から第一次

 

世界大戦まで」とある。明治に入り日本は入れ墨と言う野蛮な文化が世界から嘲笑されると危惧して取り締まりを始めた。しかし逆

 

に西欧諸国から入国する外国人にとっては浮世絵に相当するジャポニズムを刺激された。最初は船員から火が付いて、横浜等の

 

入れ墨彫師はてんやわんやの忙しさだったと言う。何が良かったとか言えば芸術が肌身に描かれると言う他に海中で戦死した場

 

合、背中・腕のモンモで誰の死体だか分かると言う利点があった。それを聞いた英国のエドワード7世も軍人であるからして、一石二

 

鳥を日本来日を機に彫って貰った。この当時日本の刺青は英国でブームになっていた。

 

彼の子供も孫も親に影響されて日本で入れ墨を入れようとした。然し入れたのは二人の子供だけであって、孫が来日して入れ墨入

 

れようとしたら日本政府にダメ出しを食らった。日本では野蛮賤民が彫るものと言い含めた。火消しや鳶、飛脚や侠客が威勢を付け

 

る為、肌に針を通し絵付けしていたもので一般市民はしていなかった。

 

英国では地元にも彫師はいたが、芸術の高さにおいて日本の彫師に適わなかった。寧ろ英国の彫師は日本から大いに影響を受け

 

た。何で本書は英国の刺青に詳しいのかと思ったら、これを書いた著者がケンブリッジ図書館に勤務する日本人だった。小山謄氏

 

は日本の刺青師の中でも英国民に「エンペラー」と称賛された「彫千代」の生涯も追っている。彫千代は横浜に住んでいたが、英国

 

の二人の王子(アルバート・ビクターとジョージ)を彫ったと主張、さらにロシアのニコライ二世にも入れ墨を施術したと言う。更にニュ

 

ーヨークの億万長者マックス・バンデル氏にも大金で雇われ、その時ニューヨークでも多数彫ったと言っている。然しこの件について

 

は出国した記録がない。確かに彫千代は士族の出身で英語ができたと言うことは本当らしい。だから宣伝文句もカード化して英国上

 

流階級に渡したらしい。でもそれも英国で商売したのではなくて横浜や長崎で外国人に入れ墨を入れた。それが口コミで評判になっ

 

て日本へ行くなら是非「彫千代」に彫って貰えと広まったのではないか。又彫千代に彫って貰うことがステイタスになった。

 

画像本>

 

表紙を飾っている女性の刺青は残念ながら彫千代の作品ではない。英国でも有名な彫師の王様と言われたジョージ・バーチェットの

 

妻。着ているのではなく彫ったデザイン。日本女性の意匠も入っている刺青。白黒写真で色合いは分かないが19世紀英国では女性

 

が彫るのも多かったと言われる。日本では堅気の女性などとてもとても、親からもらった大事な体に生涯、皮膚がたるんでだらける

 

のに入れ墨を彫るなんてできるもんじゃなかった。日本ではどうもヤクザとか下級民がするイメージが強く、積極的に進める文化で

 

はなかったが、海外ではアートとして広く上流階級から末端まで愛されているようですね。

 

この本の最後にヤルタ会議の

 

チャーチル、ルーズベルト、スターリン三人とも刺青してたんだそうですよ。軍人なんてヤクザみたいなもんですから別に不思議はあ

 

りませんが、チャーチルの母親は公然と刺青を写真で見せていますし、子のチャーチルは後年その腕の場所を金の腕輪で隠すよう

 

になったと言う。若気の至りで彫ると後年後悔する人、案外多いのかもしれませんね。私は耳や鼻は掘りますが刺青は彫っていませ

 

ん。

 

―――話を彫千代に戻しますが、こういう英国上流階級の人に彫った話は、そもそも19世紀当たりジャーナリズムがいい加減で、よ

 

く調査もしないのに出版化する又は記事にする。そうすると刺青の事を書こうとする次世代のライターが、これを真偽兎も角丸写しす

 

る。他のいかさま彫師も御相伴に授かろうと便乗して、売名の為いかさまライターに法螺を吹く。ホントのことは闇の中。確かに彫千

 

の腕は一流であったでしょうが、上流階級の人達を彫ったと言うのはどうも眉唾に近いと小山氏は書いてます。博奕好きで女好き

 

の彫千代も弟子が沢山いて工房風に施術を行いやがて所帯を持ちますが、弟子に女房を寝取られ、失意のうちに北海道へ行き、

 

そこで知り合った娼婦と心中してしまいました。行年40歳若き天才彫師のドラマチックな人生でした。

 

画像彫千代>

画像刺青>

アメリカの最近の統計によれば18歳―29歳の36%がタトゥ―を入れているとか・・・・・。日本でも増えているでしょうが医師法とかで禁じている話もある。すると刺青師は廃業になってしまうよな。