夢野久作「ドグラ・マグラ」をコミックで読破!
この探偵小説のような推理サスペンスのような奇書はとても活字では読み切れない読者が多発。然し短縮しページ数を減らした漫
画なら、気合入れてエイ、ヤーとばかり読み切った。
大の大人がコミック読んでドヤ顔かい.お恥ずかしい。
そもそも『ドグラ・マグラ』とは何ぞや❓ドブロクにマグロが肴でもあるまいに、酔う前に頭を捻ってしまう。堂々巡り目くらましの意味。
キリシタン・バテレンが幻魔術のこと。そして巻頭にこう記してある。「胎児よ、胎児よ、何故踊る。母親の心が分かって恐ろしいの
か?」謎めいた呪文のよう。サイコ小説の始まり見たいなもんだ。
おどろおどろしい書き出し小説の文章を主人公が(記憶喪失者)読む所から物語は始まる。この作中小説を書いた者は九州大学で
精神科学を研究する正木敬之教授の卒業論文を基に書かれていると言う。
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赤ん坊は母親の胎内に10カ月いて分裂を何回も繰り返す.原始単細胞―魚―爬虫類―鳥―猿―の形を通り過ぎ、やっと人間の形
に辿り着く。
その成長の過程で胎児は夢を見る。夢は悪夢とも言うべき先祖の悪行の記憶、そして万有引力の法則に従って産道から産み落とさ
れ、今度は現実の悪夢の始まりとなる.胎内で怯えて見ていた夢がとうとう生死果てるまで延々と続くのだ。もう滅入るばかりの暗澹
たる物語。人生の「陰」「暗」ばかりに焦点を当てた小説。私は漫画で読んで助かった。この夢野久作の「ドグラ・マグラ」を読む人は
昔から発狂すると言われて来た。私はドブロクにマグロのイヤ、違ったドグラ・マグラ絵を見て、会話を読んで半狂乱した、ないしは
発狂しそこなった。「キ印」は発狂しないのか、「ク印」は苦悶しないのか、それは感性の遺伝子に傷があるのかが問題だ。でも夢野
先生はこのドグラ・マグラを推敲に推敲を重ねて、10年かけて書き上げた。その挙句より難解に、より支離滅裂に何が何だか意味
不明な物語が誕生して、世の読者の頭皮を混乱させたのである。
ドグラ・マグラは怪奇なストーリーだがユーモアも含めている。コミックでは「キチガイ地獄外道祭文」スチャラカ、チャカポコ乞食坊主
が木魚叩いて精神病患者への扱いを戒めている。心ない差別と偏見を止め、彼らは先天的で治る道はないけど、せめて静かに療
養できる施設を国家が建設すべきと訴えている。そうでないと患者を抱える家族まで人生設計が狂ってしまうと嘆いている。まるで
明治期の川上音二郎のオッペケペッポ~ペッポッポよろしく、スチャラカ、チャカポコと軽快な口上でまくし立てる。
例えばこうだ。『ナント皆さん紳士や淑女よ。お立合い衆の大勢様よ。
これが私の洋行土産じゃ。現代文化の影身に付き添う。この世ならなる地獄の話じゃ。鳥が囀り木の葉が茂り。花に紅葉に極楽浄
土の。
中に彷徨う精神病者じゃ。身より頼りに突き放されて。罪も報いも泣こうに泣けぬ。キチガイ乞食のあわれな姿じゃ。ここの村里、彼
処の町で。夜毎日毎に追いまくられては。石や瓦の投げ打ちされては。雨に叩かれ風に晒され、雪や氷に消え入るばっかり。そんな
地獄をこの世に作った。丸い明るい天道様まで。クルリクルリと顔をば背けて。俺は知らぬと云うたか云わぬか。ピカリピカリと笑っ
て御座るよ。チャカポコチャカポコ。』この口上はリズミカルで夢野先生は天才で狂人。
事件の容疑者呉一郎は禁断の絵巻物を見てしまう。その絵巻物こそ呉の御先祖「呉青秀」が楊貴妃に狂って国の政治が疎かにな
ってしまった玄宗皇帝を目覚めさせるために描いた絵巻だった。
自分の女房を殺し、朽ちていく姿を描いて天子様〈玄宗〉に献上し改心して貰う所存だった。しかし犯行はエスカレートし他の女性に
まで手を出した。その先祖の呉青秀の厄介な遺伝子が現世の子孫にまで及び殺人を無意識のうち重ねてしまう性(さが)が止まらな
い。もう複雑怪奇、なんとも韜晦、シッチャカメッチャカ、テキヤが言う所の持ってけ泥棒!やけのヤン八読みものなのである。コミッ
クで読むべしの寒々スリラーでもある。


