『グリコ森永事件・無知蒙昧後史』

 

「日本蒙昧前史」と言う本を借りて来て、読んでいたら冒頭に

 

白髪の老婆が「今年はきっとよくないことが起きる」

 

と予言めいたことを言った。その年1984

 

文章が長々と句読点も一般的でない磯崎憲一郎なる著者は

 

19843月に起きたグリコ森永事件について語りだす。

 

そうかグリコ社長が自宅風呂場でいきなり2人組の賊に襲われ、全裸で誘拐されたのはこの年のことだったのか。あの事件は大き

 

な犯罪だった割に印象が薄く、よく内容が分かっていない。何故莫大な誘拐身代金グリコから始まり森永、不二家、丸大、ハウ

 

ス‥‥食品メーカーへ次々脅迫状を送り付け、メディアや警察にも挑戦状や揶揄文をくどい程書き続けた。犯人グループの目的、

 

意図はよく分からなかった。

 

要は何故、あの当時一般人はよくこの事件のことが何だかわからなかったかと言えば、報道協定が結ばれていたからだと分かっ

 

た。犯人グループの動きや要望、何度も警察が取り逃がすと言う失態等々

 

事件のほとぼりが冷め、10年経って時効が成立した時(2000年)、いきなり怒涛の如く事件内容・経過を知ることになる。あれだけ多

 

くの食品メーカーに金銭を脅迫し、真の目的が金目当てなのか、からかいの愉快犯なのか、結果一銭も取らず「キツネ目の男」が容

 

疑者と言うモンタージュ写真だけが虚しく残った事件だった。それは1968年起きた3億円強奪事件のモンタージュ写真と同じように警

 

察取り逃がしの汚点として2枚は苦笑いしているように見える。

 

日本警察はそれまで世界に類例を見ない検挙率の高さを誇っていた。

 

マスコミにも冷ややかに持てはやされていたが、実際この国の検挙率の高さは一般市民の通報無くして成り立たなかった。江戸時

 

代の5人組の風習が後年に生きていたのだ。一般市民の通報や援助がないと殆どの事件は闇から闇へ時効の底なし沼に沈み、被

 

害者・家族等を悲しみのドン底へと誘う。

 

 

白髪の老婆が「よくないことが起きる」の予言から相前後して日本列島は銀行強盗が多発した。世はバブル期、阪神タイガースがバ

 

ースの活躍で優勝したこと以外は確かによくないことの目白押しだった。翌年には日航ジャンボ機墜落事故と言う大惨事があった

 

し、

 

秒単位で株価や地価が跳ね上がり、濡れ手に泡の億万長者が目白押しにはなったものの、額に汗して労働すると言う価値観は喪

 

失した.代価はそれなりに苦労して入手するところに意味があることを知った。グリコ森永事件のグループ主犯格は矢鱈と警察に揶

 

揄文を送り付け、その文面は饒舌で理路整然としており、インテリヤクザを想起させた。更に警察内部のことに詳しく、捜査の動向を

 

熟知しており、まるで警官そのものが怪人21面相のような自作自演をしているように見えた。この劇場型犯罪と呼ばれた手法は犯

 

人グループをよりエスカレートさせ、チョコレートやキャラメルに青酸カリを吹き付け、販売店に自ら陳列したり、食品関係の幹部の

 

家へ配達された。

 

各々食品メーカーは驚き全商品を商品棚から回収、森永などは暫く売り上げゼロ。現在のコロナ禍のように飲食業界閑古鳥の鳴く

 

有様となった。経済は混乱し低迷し、怪人21面相グループの高笑いだけが響くようだった。へぇ~と言う面白い話は時の森永社長の

 

実娘が最近首相を辞任した安部さんの奥さん昭恵さんだった。交際中でデートを重ねており二人はこの世の春を満喫していた。こん

 

な脅迫の真只中政治家の御曹司と被害先のジャジャ馬娘はお忍びでデートを楽しんでいた。当時から二人は世間知らずな翔んだカ

 

ップルだった。

 

勿論こういった一連の記事は磯崎氏の「日本蒙昧前史」にあった内容ではない。グリコ森永事件「真犯人」森下香枝著の受け売りだ

 

が、森下氏は時効でずっと容疑者でありながらアリバイがある為、逮捕を免れたM氏についても言及している。そのⅯ氏は大谷昭

 

宏ジャーナリストと疑惑解消の為、共著を出版しているが最重要参考人M氏は刑事事件は時効でも民事でお縄頂戴があるかも?と

 

慎重に小利口に言葉を選んで回答しているのが眼から伝わる。あの事件の主犯格は慎重で計画的で完全犯罪を目論んでいた.時

 

効だからと言って「オレは犯人だ!」と名乗り出る嘗ての御調子者とは人種を異にしていた。いずれにしてもよく分からない、永遠に

 

黒い帳が掛かったまま

 

一条の光も射さず迷宮入りした事件。犯人の真意は何だったのか?

 

当時キツネ目の男と言われたモンタージュの人も(M氏に非常に似ている)生きていれば今や目尻は垂れてタヌキ目の男と化したこ

 

とであろう。

 

化けの皮を剥がして事件の真相を語ってくれれば有難い。当時の府警の不祥事、食品業界の不正なども聞けるのではないかと老

 

爺は秋になっても一向に暑さが柔らがないカンカンお日様を見上げてこう呟く。「今年はきっと良いことが起きる」‥‥‥と、そう願わ

 

ざるを得ない。

 

≪左記を参考にしています≫