マスコミ報道によれば、民主党は都道府県議会議員の選挙区の区割りを各議会が自主的に決められるよう公職選挙法を改正する検討に入った、とありました。現在は、市と郡を原則としている選挙区の単位を、都道府県の条例で定められるようにするということです。地方の権限を強める狙いということだそうです。

 桜井は、昨年10月のブログ で、都道府県議会議員選挙の選挙制度は政治哲学として破綻していると指摘しました。選挙制度は議員の選び方そのものです。ですから、議会はどのような機能を持つべきか、議会でどのような議論をすべきか、ということを踏まえて、どのような方法で議員を選ぶべきか、と考えるべきです。しかし、現行の法制度では、市と郡が選挙区になっています。が、県議会議員は各市・郡の利益代表ではなく、あくまで県全体の代表者です。ですから、市と郡を選挙区とすることの合理的必要性はありません。
 一方で、市と郡を選挙区の区割りの原則としているために、過疎地では田舎では小選挙区(1人区)となり、都市部では大選挙区(定数2以上)となります。
 小選挙区というのは第一党のみの意見を取り入れ、それ以外の意見を切り捨てる制度、つまり、少数派の意見を切り捨てる制度です。第二党でも議席の獲得は難しく、第三党以下には他党との連携なしでは議席獲得は無理です。
 大選挙区というのは第一党に不利で少数党に有利な制度です。大選挙区においては、少数政党は1人の候補を立てればよいのです。第一党は得票を効果的に議席に反映させるためには複数候補を擁立する必要がありますが票割が難しく得票数程の議席を獲得できません。

 顕著な例が2010年参議院議員選挙東京選挙区で、トップ当選の蓮舫氏は171万票、最下位当選(5位)は65万票でした。つまり、蓮舫氏の票を巧く分けることができればもう一人当選させることができたのです。
 もう少し精緻な議論をすれば、民主党は蓮舫元行革相と小川法相の2人を擁立していましたが合計240万票獲得しました。これを比例代表のドント方式で配分しますと、民主党3議席(1位、2位、4位)、公明1議席(3位)、自民党1議席(5位)で、みんなの党は議席を獲得できませんでした。すなわち、第一党が損をし、第四党が得をした訳です。
 さらに、この選挙で、仮に、東京が5つの小選挙区に区分されていれば、民主党が5議席を独占できたはずです。このように小選挙区では第一党に極めて有利です。
 ところで、171万票でも65万票でも同じ1議席です。これで、正統に民意が反映されていると言えるでしょうか?

 結局のところ、大選挙区には根本的な問題があり、採用すべきではありません。理論的には、選挙制度は小選挙区制または比例代表制の何れかであるべきです。折衷案としては、小選挙区比例代表の並立制(日本の衆議院)、併用制(ドイツの下院議員)、連用制などがあります。

 さらに、過疎地ではなぜ小選挙区とすべきなのか、都市部では大選挙区なのか、そこに政治哲学はありません。どうして、このような制度が60年以上も放置されてきたのか、摩訶不思議です。
 地方自治は二元代表制が採用されております。一方の代表の知事が小選挙区制で選ばれているということから、都道府県議については比例代表制を基本とした方式で選ばれるべきだと思います。具体的には、比例代表記名式(参議院比例区)か筋だと思いますが、地域的偏りを最小化するのであれば小選挙区比例代表併用制でもよいと思います。

 書いていて長くなったので、続きは明日に。



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