猪瀬直樹氏(東京都副知事)著の「昭和16年夏の敗戦 」を読みました。

 本書によれば(要約はコチラ )、20世紀初頭、世界各地に植民地を有していたイギリスは、平時戦時を通じて軍部と他の政府機関との連絡調整を図るため、その要員を養成する国防大学(世界戦略研究所)なるものを設立していたそうです。

 日本も陸軍と海軍の連携の悪さというのは有名でしたが、これは日本に限ったことではなく列強各国同様の問題を抱えていたようです。イギリスは、1年30人程度のエリートを集めて教育というよりエリートグループを作ることで、人脈によってタテ割の弊害を抑制しようとしていたものと思われます。

 日本もイギリスを真似て、昭和15年に総力戦研究所を設置し、1年間の研究成果を昭和16年夏にまとめたそうです。ここでの結論は、対英米戦争を始めれば日本敗戦必至でした。


 戦争をするには、石油が必要です。が、当時の日本は、石油をアメリカからの輸入に頼っておりました。対日禁輸となれば、石油を確保するために、当時オランダの植民地で油田地帯であったスマトラ島を占領せざるをえません。そして、首尾よく占領できたとして、スマトラ島から日本までどうやって運ぶのか、輸送手段も確保できていない状況で戦争をはじめてしまったということです。


 平沼騏一郎内閣は、「欧州の天地は複雑奇怪」として総辞職しましたが、ヒトラーはルーマニアの石油が欲しくて独ソ不可侵条約を結び、それでも足りないとなればソ連石油を獲りにバクーを目指してソ連へ侵攻したということで、複雑奇怪どころか単純明快だったのです。

 総理大臣すら、そんなことも分かっていなかった当時の日本の政治ですから、この点からも敗戦も必至なのでしょう。


 本書によれば、総力戦研究所の発表を2日間にわたって東條英機総理大臣は聴き、克明にメモを取っていたそうです。つまり、東條総理自身、対英米戦争は勝てないことは分かっていたんだと思います。


 政治の最大の失敗は、戦争、特に敗戦です。日本の昭和初期の政治の貧困を改めて思い知る良書でした。





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