「『こども手当』という考え(その1)」 のブログの続きです。
 こども手当の本質として、
1)子育ての責任主体は誰か?という政治哲学的な問題
2)所得控除から給付への変更という税制上の技術的な問題
3)現物給付か現金給付かという給付方法という技術的な問題
 の3点をあげました。

 そして、前回、1)子育ての責任主体については、親と社会の共同責任と申し上げました。
 今日は、2)所得控除から給付への変更という税制上の技術的な問題について話したいと思います。

 所得控除という仕組みにおいては、所得から扶養控除38万円を差し引いた後に課税額を算出します。高額所得者であれば、最高税率が国税と地方税を合わせて50%ですので、38万円×50%=19万円、納税額が軽減されます。一方で、課税額がゼロの低所得者は、扶養控除の恩恵はありません。つまり、所得が大きい方が、税制上の恩恵を受けられるというのが、所得控除という仕組みです。
 他方で、給付の場合(現行のこども手当の場合)には、所得額に拘わらず、一定額の給付を受けられますので、等しく恩恵を受けられます。
 以上の点から、所得控除よりも給付の方が、格差是正(財政の所得再分配機能)という点でより適切な手法であると桜井シュウは考えています。

 この所得再分配機能というのは、財政の重要な機能の一つであります。日本においては、社会保障を含めた税制で所得再分配が適切に行われていないという問題があります。コチラ(国会議員政策担当秘書試験 平成21年度) のp.4によくまとまった資料がありましたのでご参照いただきたいのですが、日本では、税・社会保障給付を含めない市場所得ベースの貧困率よりも税・社会保障給付を含めた可処分所得ベースの貧困率の方が大きくなっています。他の先進諸国においては、格差社会と言われるアメリカ合衆国を含め、市場所得ベースの貧困率よりも可処分所得ベースの貧困率が低くなっていることから、所得再分配機能が適切に働いていると言えます。が、先進諸国において、日本だけが所得再分配機能が逆方向(格差を拡大する方向)に働いています。
 この問題については、「子どもの貧困(阿部彩 著)」 に詳しくありますので、是非、読んでいただければと思います。ちなみに、著者の阿部彩さんは、友人の奥様です。ですので、本を読む際には、是非、買っていただきたくお願い申し上げます(笑)。岩波新書なので、お求め易いお値段となっておりますので・・・。