保育園の帰り道
玲さんは運転しながら
すごい提案をしてくれた
「ねぇ、美紗。引っ越し先のアパートって、もう契約しちゃった?」
「まだ…」
「じゃあ、アパートじゃなくて、うちに越して来るってどう?うちは部屋も余ってるし、サポートもしてあげられる。いくら隣にKくんがいても、お昼は1人だし、これから赤ちゃんが産まれたら、絶対、うちにいたほうがいいと思うんだよね。どうかな?」
「すっごく嬉しい!でも、家を出てやっていこうと思って引っ越すのに、結局みんなに甘えてしまいそうだし、やっぱりアパートの方がいいかも…」
「甘えていいんだよ。美紗は1人で頑張って抱えすぎ!もっと、楽に生きていいの。ちょっと帰ったらKくんにも提案してみるね」
玲さんの家に着いて
彼にも玲さんが話し始めた
「Kくん、美紗の引っ越し先なんだけど、うちはどうかな?部屋も余ってるし、うちならサポートもしてあげられる。美紗は甘えてしまうからアパートに!って言ってるけど、Kくんはどう思う?」
「考えもしなかった。それなら、昼も安心してられるけど………」
「Kくんにとっては、複雑かぁ」
「まぁ……………俺としては大好きだった元カレの家に彼女が住んでるって、めちゃくちゃ、複雑で……美紗も、もう吹っ切れてることは知ってるのに、どうしても嫉妬してしまう………って、何言ってんだろ。あー、俺、めちゃくちゃカッコ悪い」
「K………。
玲さん、やっぱり、私アパートに引っ越すよ」
「美紗、俺のこと考えてくれてるなら、気にしなくていいよ。俺としても、いくら俺の隣の部屋とはいえ、俺が仕事行ってるときとか、心配だから、玲さんの家ならより安心できるし、甘えさせてもらわない?」
「Kの気持ち無視して、私が玲さんの家で暮らすことは出来ないよ。買い物だって、短い時間ならきっと大丈夫。甘えてるだけじゃどうにもならないし」
「買い物ってなんのこと?」
「最近、美紗、外で声かけられることが多くなって、この前はしつこく声をかけてきたグループの奴らに車に連れ込まれそうになったって…………。それ以来、1人で外出したくないって言ってって……。でも、食材の買い出しとかはどうしても行かなきゃないし、結構、美紗には精神的な負担になってると思うんですよね………」
「何で、もっと早く言わないの!美紗も……めちゃくちゃ怖かったよね。外に出るのトラウマになっちゃうよね。だったら、なおさらアパートじゃなくて、うちにしたほうがいい。
美紗、迷惑じゃないから!1人で抱えないで!もっと私を頼りなさい」
「玲さん………………」
「美紗には、買い物とかランチとか楽しんでほしいと思ってるのに、今、それができない状況でストレスが溜まる一方……。今は、甘えさせてもらおう」
「買い物も1人で行かなくてよくなる?声かけられることもなくなる?」
「私が一緒の時に声かけてくる奴がいたら、私が守るから、もう、怖くないよ」
玲さんの言葉に
力が抜けてしまった
「美紗!」
「平気。安心したら、力抜けちゃって………。
K……、きっと私がここに住んだら、いろんな気持ちの葛藤があると思うけど、今は玲さんに甘えさせてもらおうと思ってるけど、いいかな?」
「俺は美紗の気持ちを大事にしたいから、美紗の決めたことを尊重するよ」
「ありがとう」
玲さんの家に
引っ越しが決まった