言われたくない
“寂しそう”ってワードを
口にした淳くん







「えっ?淳くん……」







寂しそうに見えてたのかと思ったら
気付いたら泣いてしまった







「わっ!美紗さん……どうしたの?えっ、俺等、何か悪いこと言ったかな?」


「違うの。寂しそうに見えてたのかと思ったら、色々考えちゃって…思い出しちゃって………」


「うわ~、俺…………。美紗さん、ゴメン……。わー、どうしよう。もう…放っておけない」







いきなり
抱きしめられた







「キャっ!!イヤ!離して………」


「淳…、お前、何やってんだよ」


「淳くん……離して!
ゴメン…ありがとう。もう大丈夫だから、ホント、離して

 




震えてるのがバレちゃう







「大丈夫じゃないでしょ?無理しなくていいよ。泣きたい時は泣けばいいじゃん。俺が隠しててあげるから、泣きたいだけ泣いていいよ」





 
“泣きたいだけ泣け”なんて
彼以外に言われることはないと思ってた
それをサラッと口にする淳くん
その言葉が優しさからなのか
下心あってなのか分からないけど
直感的に一緒にいたら
ダメな気がした







「淳くん…ほんとに大丈夫だから………離して………」







“カランカラン”


「いらっしゃいませ」







小声で

「淳!離れろって。美紗ちゃん、困ってるだろ!離れろって!俺、接客いくから離れろよ」







そう言うと
皇紀くんが接客に行ってしまった








「離して!もう大丈夫」
 

「イヤ!美紗さんが大丈夫でも…離したくない…………」


「離して!ホントにこういうのやめて!お願い……離れて!」







皇紀くんの接客してる声が聞こえる







「いらっしゃいませ、Kさん、いつもありがとう………あっ!Kさん…そっちはお客様が…」



“コツコツコツコツ”



“Kさん?まさか…………”



内心ちょっと思ったけど
同じ名前の人なんていっぱいいる
都合よく彼が来ることなんてあり得ない







「美紗?」







名前を呼ばれて
驚いて振り返った