一旦
ナースルームに戻った陽菜さんがきた
“コンコンコン”
「失礼します。K先生………実は………」
「知ってるよ。でも、このまま、黙っててくれると助かる」
「でも…」
「子どもたちは美紗が帰って来るの楽しみにしてるのに入院が延びたら、美紗が“嘘をついた”って思うかもしれない。それだけは避けたいから、陽菜さんさえ言わないでくれたら…………」
「………分かりました」
「陽菜さん、ありがとう」
「K先生来たとき、まだ、美紗さん発作起こしてました?」
「いや、治まってた。ただ、顔色が寝不足って言ってる割には少し悪かったのと、抱きしめたときの匂いが違ったから」
「匂い?」
「もう、フェチじゃなく、変態レベルだよね」
「発作のあとって、ちょっとだけ、美紗の匂いが違うんだ。だから、ちょっと何か怪しい時は抱きしめればだいたい、分かる」
「すご〜い………愛ですね。そこまでわかってくれる人に出会えるって、ほぼないですよ」
「Kの匂いフェチは、ここまでいくと特技だよね」
「あっ!でも、これは美紗限定だから、他の人は仲良くなっても分からないよ」
「羨ましいです」
「ありがとう……私、すっごく愛されてるね」
話してるうちに
退院手続きもおわり
急患対応で出来なかった
颯真のカウンセリングは
また後日になった
「車ないからタクシーで帰る?俺が送っていくわけにはいかないし…」
「タクシー呼びますか?」
「Kの家にも荷物あるから、それ取りに行ってからタクシーで帰ろうと思ってたけど、寄ってもいい?」
「もちろん。じゃあ、タクシーは後でいいね」
「分かりました。あと、運ぶものあれば運びますよ」
荷物も陽菜さんに手伝ってもらって
病院スタッフに挨拶を済ませ
一旦
彼の家へ