退院日当日
「おはようございます。バイタルチェックしますね。体調はどうですか?」
「陽菜さん、おはよう。体調、大丈夫です」
「血圧も体温も異常ないですね。朝食後、N先生の診察があるので、よろしくお願いします」
「美紗、入るよ。体調どう?」
「うん。何ともないよ。大丈夫」
「ん?…………どうした?何かあった?」
「あっ!違う…………。何ていうか、違和感みたいな……。多分、昨日、よく寝れてなかったのかな?ちょっとだるい感じがするだけだから、大丈夫だよ」
「俺が来てから何回、大丈夫って言った?ホントは何かあるでしょ?
陽菜さん、バイタルは異常ない?」
「はい。美紗さん、もともと血圧は低いので、それを踏まえても、異常はないですよ。私も、さっき、体調を聞いたら“大丈夫”って言われて気にはなったんですが…」
「陽菜さん、N先生呼んできてください。それと颯真さん来てたら、颯真さんもお願いします」
「分かりました」
陽菜さんが先生たちを迎えにいって
彼と2人きりに
「ホントにどうした?」
「う〜ん…私も分かんないの。何かね…モヤモヤするっていうか、多分、不安なんだと思う………」
「何が不安?ちょっとでも引っかかることがあれば、話してみて」
「ホントに、分かんないの………でもモヤモヤする…………」
「もしかして、高校生の頃、デートしたあと家に帰るときの感じに似てるんじゃない?」
「あっ!そうかも」
「何でだろう?家に帰って、心配な事とかある?」
「うーん………………」
「もしかして…旦那さんのこと?」
「吹っ切れたつもりだけど、ホントは気になってるのかな?!もし、帰って居たらどうしようとか、突然、家に来たらとか………だって、来たら子どもたちが居たら、追い返すわけにいかないし、怖い気持ちがあるから追い返せるほど、きっと強く言えない…………」
「それ、いつから考えてた?」
「多分、昨日の夜………だから寝れなかったのかも」
「考えてたわけじゃないの?」
「よく分かんない。でも片隅に、いつも燻ってたのかも。ただ、その気持ちに気づかないフリして、退院が決まって、見てみないフリができなくなってきたのかな………」
“コンコンコン”
「美紗ちゃん、何かあった?」
「ちょっと気持ちが不安定で………。退院してからが心配かなって思うけど、それも踏まえて、サポート体制を考えないと…って感じです」
「Kくん、あとでカンファの時に詳しく聞かせて!
お腹の張りとか胸の痛みはどう?」
「お腹の張りも胸の痛みもないです」
「バイタルも異常なかったし、今日、予定通りの退院で大丈夫そうだね。あとは、朝ご飯しっかり食べて、ゆっくりしててね。俺達は、最終カンファでこれからの事とか話してくるよ」
退院の準備はできてるし
ご飯食べなら
ゆったりと過ごしていた
1人でいると
考えないようにしてても
無意識に考えてしまっていた