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日経サイエンス編集長様 

 

日経サイエンス、20175月号特集の“言語学に新風”について大きな誤りがあります。 

 

“ノーム・チョムスキーが20世紀半ばに提唱した有名な「普遍文法仮説」だ。

しかし,この説は実証的な証拠を欠いているために疑問が呈され,実際の言語習得過程を調べた研究に基づく新たな考え方が登場している。「用法基盤モデル」と呼ばれるもので,子供は言語専用ではない一般的な認知能力や他者の意図を理解する能力を用いて言語を習得しているという見方だ。“ 

 

上記記事の大きな誤りは普遍文法仮説を否定されているのは事実ですが、用法基盤モデルはかなり古い風で、本当の新しい風は事例基盤モデルと言うものです。新風の大事なポイントは言語習得が生得がどうかではなく、ルール基盤かどうかと言う事です。 

 

脳が事例基盤で学習すると言う考え方が最新のディープラーニングを使った人工知能の翻訳や音声認識のシステムにつながっているからです。 

 

用法基盤モデルはチョムスキーの生得説を否定するものです。しかし、事例基盤モデルは生得説だけでなく、使い方を学ぶと言う用法基盤も否定しています。 

 

用法に基づく学習は“語彙と文法の知識を積み上げていくと言うこの仮説”と言うこの本は2003年に発行されており、それは14年も前ですから、進歩の速い脳科学や認知学のおいては非常に古い文献と言えます。 

 

Tomasello,M (2003) Constructing a language: A usage-based theory of language acquisition.  

 

言語学に新風と呼ばれ注目を浴びているのは用法基盤モデルではなく、事例基盤モデルです。 

 

事例基盤の考えは用法基盤のように使い方を学ぶのではなく、言語の習得は多くの事例をどんどん学ぶと言う考えです。事例は使い方も同時に学ぶもので、多くの事例を覚えるとその事例から類似のパターンが見えてくると言う考えです。 

 

事例基盤モデルは2006 年にThe Linguistic Review 誌で特集され、近年世界中で注目集めている言語モデルです。用法基盤より新しい考えです。 

 

グーグルや他の人工知能のニューラルネットワークによる翻訳も現在では従来の文法のルール基盤から、事例基盤の統計的な処理システムで翻訳精度を向上さています。この事例基盤の翻訳システムは人間の脳の学習の仕組みに近いものです。

 

最近ディープラーニングに注目が集まるのは脳が多くの事を事例基盤で学習しているからです。その効果的な学習を人工知能が真似ているからです。 

 

従来の音声認識も音素ベースでしたが、最近の音声認識も事例基盤の統計的な処理になっています。 

 

この件に関して26日に記事を書いた記者の方と電話で話したのですが、それはトマセロがそう思った事を書いてと言う説明でした。 

 

しかし、言語学の新風と書いてあるのですから、トマセロの事を書いたのではなく、言語学の新風にトマセロを引用するのが間違いだと思っています。 

 

編集長の見解をお聞かせください。

 

 

桜井恵三