私たちがよく使いがちな学習方法のひとつを、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の研究者Dick Schmidt氏は「ブロック・プラクティス(集中的練習)」と呼んでいます。ブロック・プラクティスとは、何度も繰り返して特定のことを練習したり、集中的に覚えたりするアプローチのこと。例えば、何時間も続けて歴史の勉強をしたり、テニスのレッスンでサーブだけを練習したりするのが、それにあたります。
Schmidt氏は、この方法ではなく、「インターリーブ(同時並行)」と呼ばれる別の学習方法を勧めています。これは、複数の情報やスキルを混ぜ合わせて学習する方法です。
同じくUCLAで心理学を研究するBob Bjork氏も、インターリーブ・アプローチを取り上げています。Bjork氏はその一環として、さまざまなスタイルの美術作品を画面に表示して、被験者にそれぞれの特徴を教えるという実験を行っています。一方のグループにはブロック・プラクティス形式(ある画家の特徴を示す6つの例を続けて見せてから、次の画家の例に移る形式)で画像を見せ、別のグループにはインターリーブ形式(複数の画家のスタイルの例を混ぜて見せる形式)で画像を見せます。
その後、2つのグループの被験者に、先ほどは見せていない絵を新しく示し、それがどの画家のスタイルだと認識できるかどうかテストします。すると、インターリーブ形式のグループがたいてい60%前後の点数を取るのに対し、ブロック形式のグループの得点は30%前後にとどまるのです。
なお、驚いたことに、この実験の被験者のうち70%ほどは、ブロック・プラクティスが最も効果的な学習方法だと思っていたと述べています。どうやら、学習に役立つ方法を客観ていに理解するのはなかなか難しいようです。
Bjork氏の考えによれば、インターリーブに効果があるのは、人間に本来備わっている「パターンと、そこから外れたものを認識する能力」をうまく利用しているからだそうです。また、もっと実際的な面から言えば、すでに知っている情報と新しい情報を同時並行的に学習することで、情報を定期的に見直す機会を得られるという利点もあります。
インターリーブを実践したいなら、たとえば試験前には、取り組むべき3種類の科目を代わるがわる勉強してみると良いでしょう。外国語を学ぶ時には、スピーキング、リスニング、ライティングといったスキルをそれぞれまとめて学ぶのではなく、組み合わせて練習するようにしてみましょう。テニスの練習なら、今日はフォアハンドだけ、今日はバックハンドだけ、今日はサーブだけといったレッスンをするのではなく、1回のレッスンで全部を練習するようにしてください。
対策:新しいテクニックを覚えたり練習したりする時には、別のテクニックと同時並行的に練習しましょう。たとえば、特定のゴルフのスイングを練習するなら、別のスイングを混ぜて同時に練習してみてください。新しい情報を覚える時には、すでに知っている情報を混ぜてみましょう。たとえば、外国語を学ぶ場合は、すでに覚えている単語と新しい単語を組み合わせて学習するようにしましょう。
Bjork氏も言っているように、私たちはもっと賢く学習しなければいけません。「どんな仕事についていても、ほとんど常に、新しい技術を身につける必要があります。うまく学習するための方法を知るのは、とても大切なことです」とBjork氏は語っています。