緊張を乗り越えると脳内回路が強化される | 最適性理論(音のストリーム)で英語を覚える

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茂木健一郎氏が次のような答えをしています。


――脳科学的に英語力の効率的な高め方はあるのでしょうか。


近著『教養の体幹を鍛える英語トレーニング』(夜間飛行)
茂木:日本人の英語学習のパターンを見ていると、緊張感が足りていません。それは学生にもビジネスパーソンにも言えることです。たとえば、僕は大学の講義で学生に英語の1分間スピーチを求めているんですが、その理由は、緊張を乗り越えて何らかの達成感が得られると、ドーパミンが出て英語の脳内回路が強化されるからです。そのためにも、ターゲットはなるべく厳しいほうがいい。たとえば、五輪の陸上100㍍決勝のスタート直前のアスリートくらいの緊張感をもって英語を学ぶことが脳科学的には望ましいんです。


――ウサイン・ボルトと争うような気持ちで英語を学ぶということですね。


茂木:脳にとっては、そうですね。あと、実践的に言えば、ジョークが大事です。意外にもジョークは自分の英語が通じるかどうかの試金石になります。簡単なジョークでもわかったふりができないからです。僕は英語の教材として、いつもコメディーのドラマや映画を薦めていますが、それは英語圏のジョークも肌で感じられるからです。ビジネスの現場で、ちょっとしたジョークが言えれば、それだけ高い評価を得ることができます。


――英語をシャワーのように浴びる方法も有効だと言われています。


茂木:脳科学的に外国語習得について確実に言えることは、「その言語の文脈にどれくらい浸るのかで語学習得の達成度が決まる」ということです。つまり、英語の社会、文化の中で生活しているくらいに英語に接すれば、達成度を高めることができるんです。

――と言うと、やはり海外に行かないとダメなのでしょうか。


茂木:行くのがいちばんでしょうが、日本でも学習は可能です。たとえば、ツイッターのトレンドワードの設定をアメリカにすると、英語圏のトレンド情報を知ることができます。それは活きた英語圏の雰囲気があり、非常に勉強になります。どんなに日本で英語を勉強しても、ネイティブで話題になっていることはなかなかわかりません。それを知っていれば、ネイティブとの会話もスムーズになるはずです。その意味で、ネットは生きた言葉の教室だと言えるでしょう。

認知症予防にも効果何歳から始めてもOK


――茂木さんは、英語の原著を読むことも勧めていますね。


茂木:英語力は読書量に比例すると思います。言葉は単独では存在せず、ある種の枠組みや考え方の中で成立しています。それが身に付いていなければ、力のある言葉を発することはできません。僕はいつも「読んだ本の高さだけ自分の足の下に本が積み重なって、それだけ遠くまで見える」という言い方をしているんですが、それは日本語でも英語でも同様のことが言えるんです。


――たとえば、どんな本を読めばいいのでしょうか。


茂木:英語の本については、新聞の売り上げランキングに載っているようなノンフィクション本をお薦めします。たとえば、スティーブ・ジョブズの伝記でも構いません。つまり、ビジネスパーソンとして興味が持てる本から入るのがいい。

――わからない単語はすぐ調べるのでしょうか。


茂木:僕は必ず電子辞書でチェックします。ボキャブラリーを増やすいちばんいい方法は、本を読んでわからない単語に出合った瞬間に、辞書でチェックすることです。脳科学的に言えば、脳が疑問を持っているときこそ記憶がいちばん定着しやすい。ただ一方で、わからない単語があっても最後まで読み通すモードも必要です。とにかく一冊でもいいから英語の本を読んだという成功経験がドーパミンを生み出します。

ちなみに認知症予防という観点からも、言語学習は効果的だと言われています。第二言語のレベルを上げていくと脳の回路が強化されて、認知症にもなりにくい。しかも重要なのは何歳から始めてもいいということ。その意味では、どんな年齢になっても英語は挑戦すべきなんです。


――これを読んだ人は誰でも今がチャンスですね。


茂木:世界的に見ても、日本文化の競争力はますます高まっています。日本食の浸透度もすごい。ある意味、日本人は非常に有利な立場にいる時代になったんです。

アニメ、マンガも含めて世界での日本文化の認知度は高い。外国の人が日本人に聞きたいことはいっぱいあるはずです。今こそ、英語を身に付けるいいタイミングだと思います。ただ、日本のことを語れる分野を持っているといいですね。好きな人はホントに日本のことをよく知ってますから。