脳科学の加藤俊徳先生と、英語講師・安河内哲也先生が、その方法について話しております。今日はその3を紹介します。
鉄則その3:経験と結びつけて記憶する
安河内:第3の鉄則が出てきましたね……。「経験と結びつけて記憶しろ」ということでしょうか?
加藤:そうです。「declarative memory =陳述記憶」といって、「出来事」に関する記憶は、比較的長い時間残りやすいんですね。特に、ドラマのように時間軸に沿って体験が記憶されると、思い出しやすいわけです。
安河内:ということは、好きな映画のドラマの一場面で、好きな俳優さんが話す英語というのは覚えやすいと言えるのでしょうか。
加藤:覚えやすいし、なにより、親近感がある。自分が好きな記憶というのは、よく思い出しますよね。つまり再生率が高い記憶ですから、より何度も思い出し、その分さらに記憶が強くなります。
たとえば、授業で習った英語というのは、授業が終わると思い出しませんよね。しかし、英語は、授業と授業の合間に伸びるわけです。
アメリカで研究しているときは、四六時中英語で考えるわけですよ。患者さんを診ながら、「Magnetic Resonance Imaging (MRI)」とか「sequence=撮影プログラムなどの順序」とかっていう単語がぐるぐる回るんです。「自分専用の単語」が、何度もリフレインされることで、脳の中の神経細胞が繋がって、「英語の道路」ができるわけです。
安河内:先生、それはつまり、一度、脳番地がつながって「英語の回路」ができると、それまで苦労していた英語が、脳に入りやすくなるということですか? そして、脳に英語が入りやすくなることで、英語学習に拍車がかかる……?
加藤:入りやすくなって、拍車がかかるし、記憶することも楽になります。そして、一度その回路を使うと、脳はまた同じ回路を使いたくなるんです。つまりゲームでも一緒ですね。一度、パチンコや競馬で勝つと、同じようなやり方で、もう一度勝ちたいと思うというような。
脳番地がつながって「英語の回路」ができると言う考えは不自然です。それは脳はある特定の番地ではなく、パターンで学習します。そのために音や意味や時間等の類似性があると累積効果が生まれます。
そのために英語の回路を作る事でなく、多くの英語表現を覚える事が大事です。脳科学的に見れば英語回路があるから英語を話して理解するではなく、その表現を覚える事により可能となります。
英語の回路ができれば何でも英語が理解できるのではありません。