皆様、ご、ご、ご無沙汰しております。

 春のライブ「スプリング春祭り」東京会場にて声をかけてくださったお二方、ありがとうございました(お礼が遅い!)。

 新聞連載に追いかけられておりましたが、やっとダッコー(脱稿)しました。追いかけられてとかいいつつ、毎夜毎晩、呑みまくっていたのですが。




 遊びすぎのせいか執筆のせいか分からないのだが、(ちょうどライブの頃に)35歳にして「腰痛」が発生!

 寝た状態から起き上がれない。座った状態から立てない。立った状態から座れない。

 つまり、姿勢を変えるときに痛むわけです。アイタタ、アイタタ、と自分の口から漏れる言葉が本当に中年老年のソレでなあ……。

 あぁ、と思いました。人生後半戦だ、と。痛みと「つきあっていく」人生のはじまりだ、と。




 寝る前に、でもなんかなかったか、と薬の箱をあさったら、十年近く前の「ニューアンメルツヨコヨコ」が出てきました。ニューだけど古い。

 ヨコヨコというだけあって、これは塗り口が横にかたむいている。アラビックヤマトでいうところの「アラビックヤマトL」だ(わかりにくい喩えだなー)。

 つまり、これは「肩」に塗りやすい形状をしている。腰用ではないわけです。

 十年前のを塗ること自体どうなんだという気もするが、とにかくこれを後ろ手に持って背中にあて、ヨコヨコと腰に塗り込んだわけです。

 どれくらい濡ればいいのか、分からない。なにしろ腰痛になったことがないから。かなりタップリとヨコヨコしたわけです。




 そしたら垂れるんだなぁ。液ってものは。ニューアンメルツヨコヨコは液状なのです。

 背中から垂れた液は、まあお尻にいきます。お尻はというのは、まあ割れているわけです。割れたその流れにそって、液が収斂しますわな。

 大河がやがて一筋の流れとなるがごとく(*注・慣用句的に正確なのは「幾筋もの流れがやがて大河となるごとく」)、ある一点に集中する!




 それはまあつまり肛門ということですが。

 布団に入ったときはもう痛いんだ。ヒリヒリヒリヒリしてねえ。またこれが大量に塗りこんだから(オレが)。

 腰と尻、二重の痛みにまんじりともせぬまま夜を明かし、薬局にいったわけです。




 垂れないのをくれ、と。そこには湿布薬がごちゃまんとあるわけです。

 腰痛ビギナーとしては、まあなにも知らないから、どれが今トレンドかも、分からない。

 なんとなく、ただの「サロンパス」とか「トクホン」じゃヤダ(なんでだ)。なんかこー、そういう定番は、おじいちゃんとかが頑固に指名買いしてるから、消えずに残っているだけなんじゃないか。もっとこう、あるんでしょ? インドメタシンとか、フェルビナクとか入ってる、今風のやつがよ。




 そりゃまあ、ある。CMでさんざんいってるし。

 ぜひともそういうのを買おう、と思ってパッケージをみて、今度は別の自意識でためらってしまった。

 なんでこう、どの湿布薬のパッケージも、筋骨隆々なんだろう。

 すんごい逆三角形。なんかこう、ヴィレッジピープルぽさすら感ずる。

 いや、別にそんな腰じゃないんですけど。そこまでじゃないんですけど。




 知ってる、って向こうはいうだろう。箱絵に描いてあるからって、「こういう腰に貼れヨー」って意味じゃない。

 分かってる、ってこっちもいう。




 肉体ではなく筋肉の絵が描かれた「フェイタス」というのをやっと選んで、駅前のベッカーズで朝食後、早速貼ることに(痛いから)。

 ベッカーズのトイレで箱を空けると薄っぺらい湿布薬が出てきた。

 はがす台紙の面には、貼り方が印字されている。

 なになに。

 台紙は二カ所に半円の切れ込みがあって、三分割されている。

1トロフィーカップ型の「真ん中」をまずはがす。(左右に残った台紙部分を手に持つ)

2患部に貼る。

3残った左右の台紙をはがす。




 その通りにしてみる。

 ……なるほど、うまくできてる。台紙が一枚だと、はがしにくいし、失敗したサランラップみたいに湿布薬同士がくっついて「ンモー!」ってなったりしないよう、工夫されているのだった。

 真ん中をはいで、背中の腰のあたりにあてがい、コンビニおにぎりの気持ちで左右の台紙もはがし、うん、一人でできるもん!




 上手に貼れて、そのあとジワジワと立ち上ってきたムナシサはなんだろう。

 ベッカーズのトイレで一人で上手にシップを貼っている独り身三十五歳の男が鏡に映っている、というその全体に対しての、この!




 えー、その後、腰痛は一度も起きてません。

 ……なんか、このネタは「あんた最高だ!」的だな、と思って、これまでどこにも書かずにいました。

 追記・佐野洋子さんが「効くのヨ」と分けてくれた湿布薬は「コランデス」という名前です。