去年リリースした真心初のカヴァーアルバム「PACK TO THE FUTURE」 。


 収録した石川秀美さんの「ゆ・れ・て湘南」のアレンジネタをあたくし、当時ビミョーにヒットした某ニューウェーブバンドからひっぱってまいりました。というのも、そのネタ曲はあたしが高校時分初めて人前でライブしたときに演奏した、忘れようにも忘れ得ぬ思い出ソング。青春を過ごした1980年代の、大好きな歌謡曲にぶちこむに、あたしにとってはこれ以上ない洋楽ネタ。しかも、両曲とも、マイナーコードに疾走する8ビートをかけ合わせた何とも言えぬ切なさ満載で、もう最初っから「このネタで秀美ちゃんやりたい!」と、メンバー及びスタッフに強くプレゼンしていたのです。


 オマージュ魂大放出で録音は上出来。ライブも振り付けコピーで大盛り上がり。大満足していた折、お客さんからある書き込みが。曰く、「秀美ちゃんのファースアルバムに収録されている『ゆ・れ・て湘南』は鈴木茂さんアレンジによるシングルとは別のバージョン。しかもネタはおそらく桜井さんと一緒。これは、意識してのことですか?」と。


 とんでもない。別バージョンの存在も、ましてやそれがあの鈴木茂さんであることも、そのうえあの曲を引用しているらしきことも!


 いまだ不得意な検索検索頑張っても、一向に出てこぬ情報。ならばアナログ作戦で確かめよう。しかしながら、あいにく石川秀美のファーストアルバムを今も大事に持っているマニアックな知人はひとりもおらず。


 そんなもやもやハートを抱えたままの先月末、ARABAKIロックフェスに呼んでいただいて仙台駅に降り立ったところ、駅前パルコに「廃盤レコード&CDフェア開催中」なる垂れ幕が。期待半分あきらめ半分、これまた不得意なアナログレコード掘り(ほこりっぽくて、苦手)を頑張ったところ。


 でました!


 さわやか天使=石川秀美のファースト・アルバム!題して「妖精(フェアリー)」!!


 なんという出会い。あれほど探してみつからなかった宝もの、なんとお値段300円!!!


 一気にテンションが上がり、旅先だっつーのにまあまあの量(ビバさんのデビューアルバム「CLAXON」含む)買っちゃいました。


 帰ってブツに針を落としてまたびっくり。なるほどその通り!イントロこそ違えど、歌が始まった瞬間飛び出してくる、エッジききまくりのカッティングギター!間違いありません。16歳の俺が弾いた、アレです。しかも、さすが茂さん。音が。音作りが。尋常じゃなく、凝りに凝っている。ギターやアンプのチョイスは勿論、使用するエフェクターの配列からパラメーター設定に至るまで、元ネタ音源をだいぶ研究したあとがありありと伺える。こりゃー相当時間かけてるよ。茂さんの音が決まるまで、みーんなスタジオで待ちぼうけ食らったとみたね!


 なんて、妄想しながら実に楽しく鑑賞いたしました。


 大好きなギタリストがチョイスしたネタ。30数年の時を超え、僕は同じものにピーンときた。偶然のような必然であると、僕は思いたい。センスは時と世代を超える、そう思いたい。尊敬する大先輩に対してまことに僭越ですが、同好の喜びに震えております。まるかぶりじゃないっすか。センス、かいちーじゃないっすか、ヤバいっすよパイセン!すいません。はしゃぎました。


 「PACK TO THE FUTURE」。奇しくも、1982年にパックされた大事ななにかを、そののち音楽を始めたガキがいろんなものを経て、2015年という未来で開封した。この物語をどうしても黙っておられず、一筆とりました。


 僕たちがパックしてきたなにかは、未来にはどうなっているのだろう。君に届くかな。風にとけるかな。


 それは、未来のおたのしみ。