そして2年の月日が流れ去り


 寺尾聡「ルビーの指環(1981)」の一節から入ってしまいました、思わず。


 2年前の今頃、ここにて書いた「エロのバカ」のあの娘に、また会ってしまった…。会ったといっても、こっちはレジに並んでいるだけで、正確にいうと「存在を目視した」だけですが。


 このままいくと、またあの「そ」を食らうことになる。あの日俺を、俺の全身の力を一瞬にして奪った、いわゆるひとつの文字通り骨抜きにしちまった、あの「そ」!


 詳しくは、お手数ですがバックナンバーをご確認くださいね。


 


 さて、ご確認いただいた体で。


 色白加減、なんとなく幸薄げなオーラ、変わってないね。淡々とドラッグストアの業務をこなす日々。2年という月日が少しだけ”生活”という影を彼女に落としたのか。ますます良くなっているぜベイベー。当然、「そ」も。ここここれは大変なことになってきたぜ、思わぬビッグチャンス到来!俺の前に客は三人。エロ的には最高のおあずけタイム。ナイスじらし、サンキュー!


 なんて密かにテンション上げまくっていたら。


「ピンポーン、2番3番、レジお願いします」


 無機的な店内アナウンス。振り返ればいつのまにやら結構長蛇なレジ待ちの列。すかさず応援に入る他の店員さん。


 ちょっと待ってくれ。これではあの娘にレジしてもらう確率3分の1になっちゃうじゃん。いやまて、並んでいる先頭のやつがあの娘のいる1番レジに入れば、あとの2人は2番3番に。そうすれば1周して俺はあの娘の1番に入れるではないか。そうだ、確率は3分の1よりぐっと高いぞ。あきらめるんじゃない、俺!


 ところが無情にも先頭は、2番へ。くそ、迅速に仕事しやがって!となるとあれか。俺の前のおばさんが、あの「そ」してもらえんのか。おばさん、いらんでしょ、あの娘のすんごい「そ」。俺、どうしても欲しいのよ「そ」。代わってよ、順番。


 腐れ外道な心のまま、僕は2番レジへ。


 迅速なるサポートに似つかわしい、健康的な女性店員さん。さっきは心でディスってごめんなさい。僕、どうかしてました。あ、お釣りすか、どうも。


「そ」。


 不意をつかれてうろたえましたが、この店、やはり「そ」が接客マニュアルになっておるのか。なかなか良い社風ではないですか。感心感心。ということはあれですね。男がレジのときには、絶対並ばないようにしよっと。さっきの迅速女子、体育会感のあるさわやかな「そ」で良かったよ。うん、またね、よろしくー。


 自動ドアをくぐって買ったものをトランクに積みながら、


「とはいえやっぱり、あの娘にしてほしい…。おととしのあの衝撃を確かめたい…。こんどいつ会えるのかわかんないし。なんか買い忘れたふりしても一回お店に入ろうかな…。」


 なんて思いがこみあげるのを必死に押し殺して、足早に家路についたもうすぐ46歳の晩春。またしても、勝手に失恋している俺なのでした。


 バカは死んでも直らないとはよく言ったものです。大人になったらバカは直らないまでも薄れることを期待していたのですが…。大人なぶんだけバカに迫力が増して、むしろ悪化しておるように感じます。


 業だね、カルマだね。


 


 そして2年の月日が流れ去り…♪ここで転調するんだよね、聡。「ルビーの指環」は、「輪」じゃなくて「環」。ぐるぐるまわって堂々巡り、てことっすよね、松本隆先生!


 再来年も同じようなことしてるんだろうなー。転調を繰り返すのかなー。


 どこまでも転調を繰り返し、時間の螺旋階段を上がってゆく…。嗚呼、カルマよ。DJ、リクエストはユニコーン「人生は上々だ」をよろしく!