夏はもはや冬より厳しい季節になりましたな。厳冬ならぬ、厳夏。みなさんお元気?
そんな夏の扉を開けた去る7月21日、いわゆる海の日、RIP SLIME主催のイベントに呼んでいただいたときのこと。
その日のライブゲストは我々の他にロックバンドではオカモトズ、ヒップホップではスチャダラパーにRHYMESTERと、実におもろい顔ぶれでした。すんばらしいマイクパフォーマンスを繰り広げるラップの勇者たちを前に、うすぼんやりイメージだけでラップをなぞる三人組をやっていることをひた隠しに、なんとか1日をやり過ごした俺。
イベントは大盛況のうちに幕。みんなでわいわい打ち上げへと突入したのでした。
と、RHYMESTER宇多丸氏が、
「あの、桜井さん、ちょっといいすか。」
何事かと。聞けば、あたしがだいぶ前に書いたブログの内容に共感していただき、自らの仕事に活かしているとのこと。一体なにを!?
遡ること8年。2006年4月に書いた「俺の耳はロバの耳」。時間のある方は是非ご参照ください。つながりうたについての話。久々に読み返したらなかなかアツいこと語っていました、俺。
この内容を宇多丸氏、すっごい買ってくれていたの。やたー!あざーす!
聞けば宇多丸氏はご自身の作品で実際に「つながり」をやっていただいているそうな。めちゃめちゃ嬉しい。
地球上の、歌詞というものを書く人間全員に強くオススメしたいと常々鼻息荒くアナウンスしていたこのメソッド。よりによってプロが、しかも日本のヒップホップ黎明期から活躍しているプロ中のプロが認めてくださっているというのが、こりゃもう光栄極まりない。しかも現場でそれが実際に響いているという。こりゃもう、歌詞書き冥利に尽きるってえもんです。みんなもやんなよ。書くのわりかし大変だけど、労力以上のリターンは必至よ。
面白いと思って放り投げた言葉が、思わぬ場所で響き、こだまみたいにこちらに帰ってくる。着想の、まさに「つながり」。こっちのアンテナも、更なるなにかをキャッチしそうな予感。こういうの、本当に愉しい。
氏曰く、
「しかも俺、いろんなとこであたかも自分であみだした手法みたいな口ぶりで喋ってるんです…!耳にしたら、使用料1回1万円請求してください!!」
いやいや、これは俺でなく佐藤雅彦さんが発見した物件。あたしはそれを、ポップスに変換したに過ぎません。耳にしたら、佐藤さんに逐一報告しておきますね。1万円もらえますよと(笑)。
拝啓宇多丸氏。打ち上げで話しそびれたその他のおもしろ作詞メソッドをついでにここで。
題しまして、同じメロディーを繰り返す箇所の母音を揃えるの術。
すなわち、あるメロディーを歌ったときたどったお口のカタチ、つまり母音を同じくすることで、つながりうたに近い気持ちよさを得られるのではないかと。カラダが喜んでくれるのではないかと。音楽的にメロディーを繰り返す必然性がある箇所ならば、発音もそこに準じるほうが、より歌としてふさわしい姿になるのではないかと。
これは桜井、自分で考えました。でも、スキマスイッチ大橋くんも以前同じようなこと言っていたような…。常識だったら、ごめんちゃい。
実例。
真心ブラザーズの曲でいうと「All I want to say to you」サビの部分。
”バラ色の微笑みを忘れたりしないのさ”
対応するメロディーにつけた歌詞は、“ただひとことの意味をたぐれば君がいた”。
ちょっと違っているところはありますが…ほとんど母音は揃っています。はっきり言って、歌いやすい。歌いやすいと、覚えやすい。覚えやすい歌というのは、いい歌だ。そうだー!うわー!
この曲は同じサビの中でかましましたが、1番と2番のBメロでかますっつーのもトライしてみました。「I'm in Love」という曲で。
1番は”泣きたくなる気分のときは”。
2番の対応する部分は”秋夏春 白い冬の扉”と。これも、パーフェクトではないすが…だいぶ頑張ってみましたよ、はい。やはり1番から2番へ時間をおいても、同じメロディーで同じお口の運動をできるということは、フィジカルに気持ちのよいことなのだと確信します。
この曲は「春夏秋」と歌わず、どうして秋から遡るのかというと、こういう理由があったから。「秋夏春」でないと、母音が合わない。文法よりも、フィジカル。
なんつって。
海の日、ベイエリア、楽しい打ち上げの席。さすがRIP SLYME、きれいなお姉さんがあちらこちらにしゃなりしゃなり。このまま作詞おたくトークをざくざく掘り下げるのもいかがなものかと、思いをぐっと佐藤の黒(さすがRIP、酒も豪華)と一緒に飲み込みました。が、やはり胃に留めておくとお口が臭くなってしまいます。言わせておくんなせえ。
宇多丸さん、これもけっこー使えまっせ。是非、お試しあれ。
更に言うと、最近擬声語が気になっています。音のない文章に音を与える、それが擬声語。音を伴う歌詞に乗せたら効果は倍増。
「どか~ん」がそれを雄弁に証明しています。
これはまだまだ奥がありそう。擬声語を受けてメロディーが導かれる。そんなの大いにあるでしょ。気になっています。掘り下げたいです。
夏だというのに、レコーディング期間ということもあり、理屈っぽくなっちまいます。可能な限りいろんな角度からものごとをチェックする思考回路。それが必要なんだけど、溺れてはいけない。直感には、あくまで素直に。俺のスピードは落ちていないか。
直感一発でいくには、夏はサイコーの季節。
口火を切った海の日。理屈モードの俺はときたら、しゃなりしゃなりのきれいなお姉さんとはぜんぜんコミュニケーションできませんでした…。こんなんじゃダメだぜ。楽園ベイベーたまんねーな、One Timeで行け、行けんのか、俺。
平日は自宅や都内地下室で制作。週末は各地で太陽を浴びてフェス。思考と直感、振れ幅MAXの2014年、夏。
なんだかすんごいレコード出来るヴァイブに包まれています。ルーレッツばいやーです。今年はニシンで日本海が真っ黒!そんな感じ。脳内ニシンを受けてフェスもぶっとばしちゃうぜ。
現場も盤も、皆さんお楽しみに!