春本番。道行く女子のスカートの丈がぐいぐい上がっています。半ズボン的なホットパンツ的なものもしかり。大変結構。男子のスケベエと女子のカワイイが幸せな利害の一致をしております。こういうのがまさにウィンウィンディールってえやつですか、違いますか。
いろいろ難儀もありますが、なんせ春。浮かれたいぜ。
車での通勤ルートに最近出来たドラッグストア。チェックがてら寄ってみる。なんとなくうろうろして、なんとなく買う。ぼーっとレジに並ぶ。お金払う。お釣りもらう。
そ。
全身の力を瞬間的に奪われ、すなわちお釣りを受け取った右手の感覚も奪われたわけで、不覚にもあたくし、小銭という小銭を真新しい床にじゃらーんと落っことしまくってしまいました。
「申し訳ありません!」
レジの女の子がそう言ってこちらへ駆け寄り落ちた小銭を拾おうとする。
「あーいいすよいいすよ!こちらこそすんません。」
そそくさと小銭を拾い集め、そそくさと自動ドアをくぐり、そそくさと駐車場へと歩く俺。
動揺を禁じえず、深呼吸をひとつ。
今のは何だったんだ。
レジ女子の、そ。お釣りを手渡して、その後お客の手をそっと握るあの動作。そもそも何なの、あの、そ。誰が考えだしたの、あのシステム。業務マニュアルに書いてあるわけ?お釣りを渡した手を握り返すべし、とか。
なにはともあれ彼女の「そ」は凄い「そ」だった。奴さん、相当デキる。あの一瞬のタッチで表現する色気、エロ。日々の営みで培った技術か、はたまた先天的な才能か。私には知るよしもありませんが、どちらにしろ、罪。
敢えて例えるなら、戦地に赴く夫に徹夜で編んだお守りを渡す瞬間のような、そ。乾いていた心を潤すような、やわらかく包み込まれるような、そんな、そ。戦地に行きたくなくなります。色白の、和風で地味な、むちゃくちゃルックスがかわいいというわけではない、というところがまたエロい。そんな彼女に、心が激しく訴えます、
「惚れてまうやろー!」
古いですか。失敬。
今回は不意をつかれたとはいえ、またあの一流の「そ」が来ると思うと、レジに並んでいる時点で手汗かくこと滝のごとし状態は必至。どのツラ下げてレジに並べばいいというの。もう、行けないね。行かないほうがいいね、あの店。
などと、勝手に失恋している44歳の春。
厄介だぜ、色。