最初に、敬称略で話を進める非礼をお詫びしておきます。


 


 山田太一が大好きです。


 と、事あるごとに方々で、もう15年以上アナウンスしております。新しい作品のOAが近づくとそわそわします。テレビを見ながら身をよじって興奮します。山崎努と松坂慶子のラブシーン(最近の)とかで。変わらぬ独特のセリフ回し。その、ひと呼んで太一節(俺しか呼んでいませんが)を、時代時代のスターたちがどう語りこなすのか、ドキドキしながら見守っています。そんな中、杉浦直樹が出てくるとほっとします。画面が安定します。奥さん役が八千草薫だったら再び血圧上昇。マジで彼女を抱きしめたくなります。嗚呼、岸辺のアルバム!全てはこの金字塔から始まった。どうしてブルーレイが出ていないのでしょうか、理解に苦しみます。仕方がないので時間があったら横浜は日本大通りにある放送ライブラリーへソフト化されていないお宝ドラマを観に行くのです。文字通り映像版図書館的なその施設、利用料なんとタダ!清潔で冷暖房完備!夢の空間、国民の血税を惜しみなく注ぎ込んで維持している気配がぷんぷん漂います。蓮舫議員の目をかいくぐって生き残っているうちに通いつめたいぜ。許されることなら、住みたいぜ。ぶっ続けで見たいのさ、あらん限りの太一を。


 とまあそんな思いで日々、生を全うさせていただいておる私なのですが。


 こんなにも熱い太一への思いを15年以上の長きにわたって世界へぶちまけているというのに、ただのひとりにも出会ったことがないのです。たった一言、


「だよね!」


 と頷いて、こちらの一投目を返球してくるソウルメイトが。


 いや、いるんですよ。優しき友人は。でもね、やっぱりね、林檎止まり。林檎っつってもあーた、椎名さんじゃないですよ。「ふぞろいの林檎たち」。これにぐっときてくれる人は数名いたものの、その先がない。みんな、林檎という果実に賛同してくれはするものの、そこに至る太い幹、果ては根っこをさかのぼるとか、他のイイ枝とか、一番新しい緑の葉っぱとか、そういったところまで目を配ってはくれないの。みんな知っているかい?何が素敵かって、太一は実は、いい男なんだよ。もちろんルックスの話。そりゃもういいおじいちゃんだけど、俺はあえて言うね。彼は、美少年だよ。そういう顔だよ。カワイイ顔の文学者って、なんかくすぐられるよね。中原中也とか。太一、そんな感じ。太一中也説。


 そんな話に、


「あるよね、あるある!」


 と答えてくれないか、誰か。ああ、今日も俺の弾丸は空へと消えてゆくばかりか。好きなものって、魂わかちあう友がいてこそ、その価値をより深く知ることができるというもの。波乗り友達、います。義太夫友達、いますとも。筒美京平友達だっています。なのに、いないの。太一友達が。村上春樹ファンが氏を「ハルキ」と呼ぶように、我らが山田太一先生を「タイチ」とフレンドリーに呼ぶ仲間が。中井貴一を良雄、時任三郎を岩田、柳沢慎吾を実と自然に呼ぶソウルメイトが。心底欲しいの、語りたいの。3日連続ぐらいで。


 人前に出る稼業なので触れずにいたミクシィやらフェイスブックやら、そういったものにすがってしまいそうです。そういったもので知り合った友達と、新作のOAを、どっかに集まってリアルタイムで観たりしたいです。録画もしておいて、ひとしきり放送が終わったら酒呑みながらプレイバックして、みんなであれこれ検証したいです。夏八木勲萌えの女の子とかいたりして、「わかってるね~」とか言いたいです。


 作品の凄さに対する世の中の評価の低さは、やはりテレビドラマというメディアに対する世間の価値観に拠るところが大きいのではないでしょうか。


 テレビドラマ。主婦が午後に寝転がってせんべいかじりながら眺めるもの。家族の晩御飯の横でなんとなく点いているもの。その場で、流れて去っていくもの。営利主義のマスメディアである以上、視聴率競争の呪縛の中で作られるもの。したがって、表現全般におけるテレビドラマの芸術的価値は、ロー。そんな位置。


 そんなもん、今の漫画や昔の特撮がそうしてくれたように、ころっとひっくり返してほしい。大衆の嗜好に喰らいつきながら己のオタク魂を貫くとき、日本のクリエイターは世界のどこへ出しても恥ずかしくない、いやむしろ誇るべきとてつもないパワーを発揮するのだから。日本のドラマ、凄いのいっぱいあるよ!太一はその世界の超のつく大家なのよ!熱いソウルと裏腹に、性格がおだやかで人当たりが柔らかいから大物感がそんなに出ていなくて、だからみんなにいまいち伝わらなくて、それがファンにはとてももどかしくて…。でも、そこがイイんだよなぁ~。自分は裏方であるという棲み分けをちゃんとされている。ぃよっ!さすが、わかってらっしゃるロックンロールエチケット!でも、倉本聰ほどふんぞり返らないまでも、山田洋次監督ぐらいの巨匠感は出しても、一向に差し支えないと思いますよ、タイチ!その長いキャリアを通し、一貫して家族というフィルターから世界を切り取ってきたタイチ。家族なる社会の単位が古今東西至るところに存在する以上、ホームドラマはこれ世界共通の演劇言語。ほんと、ノーベル文学賞とか、取っちゃえばいいのに。


 


 ああ、だいぶアツくなってしましました。久々に、取り乱した気がします。でも、いっぱい泣いたあとみたいに、得体のしれない爽快感が体を駆け巡っております。やっぱり、友がいなかろうと、ここが世界の端っこだろうが中心だろうが、タイチを叫びたいと思います。タイチと、俺の生命の限り。


 先生!新作を心待ちにしておりますYo!!!!!!!


 


 最後に、思った以上に敬称を略しまくったことを、重ねてお詫びいたします。


 大変失礼いたしました…。