気がつけばあと1カ月に迫っていました。


 ラップユニット「50円玉」、初ライブの日が。


 どうしてこういうことになったのでしょう。


 始まりももはや記憶から遠ざかりつつあります。真心のアルバム「俺たちは真心だ!」の中で僕が人生初のラップに挑戦したことがきっかけだったことは確かです。それがどうして、いつの間にかベースの一郎くんとサックスの首藤くんとの3MC編成になったのか。どうして衣装やアクセサリーがふんだんにあるのか。なぜ今年の始め中野サンプラザでの真心ライブにおいて50円玉初のオリジナル楽曲を発表することになったのか。そしてこの夏、どうしてその曲以外持ちネタが一切ないのに40分間のステージをやらねばならなくなったのか。


 どうしてこういうことになったのでしょう。


 「50対キング」と題された、下北沢SHELTER20周年を祝うイベントの一環として企画された当ライブ。主催であり対バンのYo-Kingさん発案によりこちらサイドの承諾が一切ないままチケットは発売され、なんと一瞬で売り切れ御礼となったと聞いています。


「秒殺だよ、秒殺。」


 マネージャーはご満悦です。いつものように、内容は全く度外視したまま。アンコールでセッションやれとか、何かしらのアイデアを出した気になって言っています。アンコールもなにも、そもそも本編で何をやれと言うのでしょう。曲もないうえに、俺たち3人自慢じゃないですがラップとかよくわかっとらんです!ヒップホップとか正直普段聴かないっす!一郎くんは時々呑み屋でエミネムがどうとか知識をひけらかしますが、素人耳にもなんか薄っぺらく聞こえます。そんな403人組が歴史あるSHELTERのステージ上で40分もマイク握ったら、終演後にお店の外で野球帽を斜めに被ってぶかぶかの半袖半ズボンに白光っているスニーカーの怖いお兄さん方に一方的に暴力を受けるに決まっています。ああ、もうこの物言いがすでに何らかの反感を買ってしまいそうです。


 なのに、なのについつい新しいシャツを3人分買ってしまった俺。


 みなとみらいをぷらぷら歩いていたら、どうしようもなくイイ具合のダサさを醸し出すボウリングシャツを見つけてしまったのです。僕のは赤で2人のは黒。3着とも背中にスカジャンぽい刺繍がびしっと施してあります。


 MC.Sakuの背中にはベティちゃんとトム&ジェリーのトムを合わせたような気持ち悪い猫キャラクターが描かれ、その下に金色の糸で「Rock’n Roll」と縫われています。


 MC.Ichiroの背中には銀色の竹やぶにたたずむ金色に輝く虎の姿が。縫われた文字は「YOKOSUKA JAPAN」。


 MC.Koushiに至ってはずーっと見ていたい背中になっております。そこには1m×1m×1mぐらいの巨大サイコロによりかかったモンローを模したと思われるパツキン女性が何やら叫んでいる図の刺繍が。ドロンパよろしく星条旗模様のビキニ着用の彼女。昔観た、キングコングに向かって何かを叫ぶヒロインを思い出させる表情。縫われた文字は「Lucky Lady in LAS VEGAS」。ああ、たまらない。たまらなすぎるわけのわからなさ。


 3着そろって、若干サイズでか過ぎというのもグッド。デザインはともかく刺繍自体は決して安っぽくないのに1着それぞれたったの税込2980円。3着買ってもツェー万切りのお買い得商品。山盛りで売れ残っているのをいいことに3着迷わず購入いたしました。


 さあ、外見は整いました。


 あとは中身!