去る6月某日、そのレコーディングは行われました。


 ソニー乃木坂Studio1。国内屈指のゴージャスなレコーディングスタジオに集った、これまたゴージャスなセッションメンバー。この日はイベント「Best Hit SMA」主題歌のレコーディング初日で、楽曲の屋台骨となるリズムトラックの録音が行われました。


 かつて経験したことのない特殊かつ大きなプロデュース現場であったので、記録しておこうと思います。無事にチケットも発売に至り、各種情報も公開可能になりました。ならばマニアックな枝葉の隅々も。かゆくもないところを掻いてさしあげようかと。いきますよー、ぽりぽりぽり!


 ドラムは弊社顧問奥田民生氏。ボーカルでなくあえてドラムをお願いしました。今回はいわばSMA代表選手による初のレコーディング。代表を召集するという実につらい役目をもはからずも負ってしまった私。すごいメンツとの録音現場にわくわくすると同時に、弊社専属の並みいる凄腕ミュージシャンの嫉妬は断じて買いたくない私。とくにドラマーは人材豊富なSMA。誰をも納得させるには、まずはリズム番長の椅子には顧問に座っていただくしかありませんでした。これから始まる壮大な人間関係板挟みの旅、まずはここ、顧問の権威の傘の下から始めようと。


顧問に快諾をいただき、まずは一つ目のハードルをクリア。ああよかった。


 ときたらベースは逆に若手を。「ドラムが顧問なら相方というべきベースの座は若いものにチャンスをあげなきゃね!」てぐらいの超のつく若手を。いましたよいましたよ。ハタチそこそこのぴちぴちのが。しかも天才。次世代ベースヒーローの器であると秀俊は確信しております。OKAMOTO’Sよりハマオカモトくん。民生兄さんとは親子ほどの年齢差。巨大音楽プロダクションSMAの層の厚さアピールにもつながるのではないかという目論見もありつつ。


 ならばならば。スリーリズムの花形、エレキギターには御大をお呼びしてしかるべきでしょう。出ました伝説のロックバンド・ムーンライダースより白井良明さん。あらゆるスタイルのギターを弾きこなす氏でありますが、今回はデイビットT的セクシーギターで俺たち青二才をぎゃふんと言わせていただくべくお呼びいたしました。ゴマ塩の長髪の良明さんと頑固オヤジ面の民生さん、そこに口ひげたくわえたやさぐれ息子のハマくん。三人並んだ姿はいわばロック界の三世代家族。絶賛公開中のPVではこのトリオ映像を必ずやチェックしていただきたい。層の厚さ、アピールしまくりです。


 アコースティックギターには堂島孝平くんをお呼びいたしました。彼の場合もボーカルでなく、あえてギターで。というのも今回の楽曲は3組のアーティストに書いてもらったメロディーをあたしがむりくり一曲に切り貼りしたものであり、それぞれの曲のムードをまとめ上げるために少々ひねったコード進行を施さざるを得ず、そいつをプレイするには数々のマニアックなポップソングを歌い弾きこなす堂島氏にお願いする他なかったと、こういう事情があったわけであります。弊社専属ロックギタリストは数多あれ、普段気合一発ロックンロール居合抜き現場で戦っておられるかような歴戦のお侍さんがたに、「なんだよこの曲、ややこしいよ!」と怒られるのが怖かったあたくし。その点堂島くんは「しんどいっすよ~」と言いながらもしっかりゴキゲンに弾いてくれました。いつものあの笑顔で。ありがとうプリンス、助かったぜ。


 3曲を切り貼りしたと言いました。どこからどこまでが誰の作品か、記しておきましょう。それぞれのバンドのファンの皆さま、これはおそらく他のどこでも得られない情報。必見ですよ。


 まずはAメロ。Base Ball Bearの小出くん作です。Demoの段階でメロディーだけでなくワンコーラスまるまる歌詞まで付けてくれた小出くん。出だしの8小節はこの曲のテーマとして僕が考えていた景色と一致していたのでそのまま採用させていただきました。


 続いてBメロ。頭4小節がOKAMOTO’Sショウくんとコウキくん作。「We are the world」風バラードとはっきり注文したのに、元気一番ノリノリ8ビートを作曲してきた彼ら。ご丁寧に「真心の”STONE”みたいになればいいなと思っています!」とのコメントまで添付されておる。俺の実力ではどうがんばってもそれは無理でした。テンポを半分にして腕ずくで転調して、それでも4小節の採用がやっとでした。OKAMOTO’Sファンの皆さま、たった4小節なのではなく、精一杯頑張って4小節だったのよ。誤解しないでね。でも、人の話を聞かないのって、ロックっぽくてうらやましいよね。


 そしてBメロ5小節目からサビいっぱいまでがTheイナズマ戦隊より丈弥くん久保くんによる作。これはよく出来ておりました。さすがジャニーズのタレントさんに楽曲提供している程の実力の持ち主。クライアントの要望を的確に捉え、表現しておる。よく出来てい過ぎてちょっぴりカチンとくるほどに。うーん、俺も負けていられん。めらめらと燃えあがる年下への闘争心の果て、このサビのメロディーにふさわしい歌詞が我が脳に降臨してきたとき、あたくしこのプロジェクトの勝利を確信いたしました。後日、どんなツワモノ歌手が歌いにやってきても、しっかりと彼らを受け止めてあげられる言の葉を手に入れたのだと。すなわち、


 


  僕らは歌う いつでも歌う


  君に届くかな 風にとけるかな


  僕らは歌う とにかく歌う


  君のくちびるを 伝う歌になれ


 


 話をセッションメンバーに戻しましょう。


 さて鍵盤。これは楽器の特性をきちんと生かしてあげれば複数名参加可能なので、放りこめるだけ放りこんじゃいました。ピアノに渡辺シュンスケくん、ハモンドオルガンに斉藤有太さん、シンセサイザーにはフジファブリックより金澤ダイちゃんをお呼びして。お三方とも歴戦の勇士。曲を壊すことなく、それでいてアツい俺が俺が光線を放射することも忘れず、作品の温度をぐっと上昇させてくれました。ぁありがとうございました!


 色鮮やかになったトラックにキラキラ成分をふりかけるべくあたくし自ら渾身のウインドチャイムを録音し終わったところで、おお、もう出かける時間。


 まだまだダビングもあるし、歌詞をいろんなひとに書いてもらったし、歌は20人以上いるし、ミックスもえらいことになって大変だったし…。


 ぜんぜん話が終わりません。


 次回、ダビング編をお送りいたします。お楽しみにされている、されていないに関わらずお送りいたします。


 乞うご期待!


 では、いざ北海道は倶知安町。行ってまいりまぁす!