遠征に行くと、まあ肥えますこと。

 自分に限らず歳月を共にしてきたチーム全員に言えることなのですが、以前と変わらず日本のどこかしらに赴けばご当地の美味しいものという名の思い出をめいっぱい体内に取り込もうとはしゃぐものの、取り込んだエネルギーを消費する身体的機能とりもなおさずそれはいわゆる基礎代謝が20代の頃に比べて著しく低下しているという現実。動かし難き自然の摂理。結果、余剰燃料は予備として主におなかの周りに蓄積されてゆく。文字通り、雪だるま式に。

 チーム内でもひときわ雪だるま傾向の高い男はベースの一郎くん。先日は大阪での現場であったため、摂取した量もさることながらその内訳が主に小麦粉で占められており(うどん、たこ焼き、お好み焼き、ビール…)、翌日の神戸での現場においてはベースがおなかの上に乗っかり、本体が若干上をむいている始末。「人間は40代に入ると胃袋にイースト菌を保有する。」もしもみのもんた氏にそう言われたらそんな気がしないでもない気になりそうな、それほどまでに一郎君の膨張率は立派でありました。

 なんつってるおいらも人のこと感心している場合ではありません。しっかり、ぽっこり。

 ここ数年、踏みとどまるのかフェンスの向こう側へ行ってそっち(ex.チューブのドラムの方)方面のキャラになるのか、迷っていた私でありました。ミック・ジャガー、マドンナ、凄いけど、絶対大変じゃん。ならばいっそ、楽になってフェンスの向こうへ…。聴こえるメロディーは「夢の中へ」。探し物は何ですか?

 しかしながらこの夏、全国のロックフェスに参加させていただき並み居るロックンローラーの皆さんを間近で拝見し、思いました。特に、特に衝撃的であったのはザ・クロマニヨンズの甲本ヒロトさんであります。

 細い。

 否、常軌を逸したシャープさ。

 自分が10代の頃に打ちのめされたあの雷が、20年近くたった今も目の前で光っている。しかも、全く変わらぬまぶしさで。時空を超えた歌う奇跡に改めてフレッシュに打ちのめされてしまった‘06年夏・沖縄事件でありました。なのにこちとらフザけたヴァン・ヘイレンのTシャツからまろび出たぷるぷるの二の腕。この後同じ舞台に上がる資格が果たして俺にあるんだろうかと真剣に自問自答したっけ。

 なので、決めたのです。フェンスの瀬戸際で踏みとどまってやろうと。せいこう兄さん、あなたは「恰幅」の美を私に説きます。「桜井よ、浅草じゃあ蚊トンボみてえな男は往来の真ん中を歩けねえぜ」と。「恰幅」。なるほどそれは中高年に差し掛かる日本男児の貫禄を誇示する確かなかっこよさではあります。でも兄さん、そういったBBキング的ブルースかっこよさもイイけれど、往来の真ん中も端っこも縦横無尽になぎ倒すロックかっこよさの引力圏に俺は身を寄せたい…。実際寄れんのかどうかそれはそれとして、望むのは自由だろう?

 そういうわけで翌日、心斎橋のステップでランニング用のシューズを購入した私。

 購入しただけで6割ぐらいなんかやった気になっている、その性根が問題なのですが。