今朝、家の前の坂の途中で電話ボックスの撤去工事がありました。冬の晴れた朝、大きな音とともにクレーンで吊るし上げられる電話ボックス。何を隠そうそれはおいらが生まれて初めて女の子にデートの申し込みをすべく電話をかけにいった電話ボックス。

 以降、そこは家族に聞かれたくないまたはそのときのツラを家族に見られたくない時に必ず駆け込んで、愛のデレデレ電話していたサンクチュアリとなりました。オレの10代にとって大事な場所のひとつであった、坂の途中の電話ボックス。晩飯終わりの時間に緊張しながら下った暗い坂道。デレデレトーク終わりに月を見上げながら上ったテンション高めの坂道。

 これも時代の流れ、今までまだあったほうが不思議なくらいではありましたが、なんせサンキューな、坂の途中の電話ボックス。

 500円のテレフォンカードを面白いようにどんどん使わせてくれたお前。

 気の利かない車の音からいつも守ってくれたお前。

 秘密を、それよりも色っぽく演出してくれたお前。

 ありがとう、おつかれさまでした。




 クレーンからトラックの荷台に下ろされ、程なく連れて行かれるであろう坂の途中の電話ボックス。胸に流れるメロディーはもちろん「ドナドナ」。

 “ノット センチメンタル バット ロマンチック”などと公言している私でありますが、今、俺、一点の曇りもなく、センチメンタル。

 許してつかあさい。今だけ。