昨日の日曜は結婚パーティーがダブルヘッダーという一風変わった一日でした。

 2組ともから歌のリクエストをいただいており、スーツにギターをぶらさげて歌いに出かけました。演目は「I’m in Love」。2本回し。

 一本目はかねてからの飲み友達のカップル。飲み会を通じてイイ感じになっていった二人。その過程をいつも飲み屋の片隅でおちょこを片手に心で応援していたあたし。この曲をこの人たちに歌う気持ちはもう、いわゆるひとつの感無量であり。

 16時入り。場所は東京ミッドタウンのリッツカールトンは巨大なボールルーム!

 会場のセットから料理から酒からホスピタリティからゲストの顔ぶれに至るまで、まあセレブ極まりないこと!

 会の進行表を見ればあたしの歌のコーナーはそのセレブパーティーのクライマックスを飾る時間帯に。いきなり気が重くなる。

 まず、普通にプレッシャーである。

 次に、そのプレッシャーに打ち勝って会場を幸せムードに染めるためには、酒を我慢せねばならない。ま、ある程度。

 目の前には夢のようなごちそうと高そうな白だの赤だのシャンパンだの。理想を言えば乾杯の音頭のあとぐらいにわっしょーいと歌って、あとは好き放題飲み食いする、セレブを見物する、友人たちとあほトークをする、新郎新婦にひゅーひゅー言う。

 これが、目の前のメシとサケとセレブを2時間弱も我慢して…、蛇口に針金の力石徹の気合いで我慢して…ま、結局そこそこ呑んじゃいましたが、歌ってまいりましたともあるだけの心をこめて。

 なんと共通の友人であるゴスペラーズの酒井くんと北山君がハモってくれてとんだリッチな内容に。ゴージャスムードに決して負けないラブソングをお届けできたと自負しております。

 続きまして2本目。場所を移して恵比寿に20時。所属レコード会社の真心ブラザーズ担当美人A&Rの結婚パーティーへ。

 セレブムードから一転、若者集うクラブムードへ。お金払ってちゃんねーとケーサミーノするブークラでなくてDJがくわききくわききレコードこすって回してみんなで酒飲んで踊る、そっちのクラブね。説明不要でしたか。そうですか。

 20代カップルのパーティーとあって来賓のみなさんも必然的に20代中心。盛り上がり方も1本目のセレブと別次元の甘酸っぱい勢いに満ち溢れている。キューンレコードを中心とするやさぐれ音楽業界人どもの一団にそこはかとなく押し寄せるアウェイの波。この現場もクライマックスタイミングの出演だったのですが、今度はいつもの真心と同じくYo-Kingさん歌唱によりプレイする「Ⅰ‘m in love」。相当な酩酊状態のあたくしでしたがライブ現場で積み上げた経験が生きました。1本目に負けず劣らずの幸せムードを演出することに成功した、と言って差し支えないと思います。




 しかし、イイですね。イイですよ、結婚パーティーで歌う「I’m in Love」は。

 普段のライブのように、ラブソングをステージから投げかけることによってシラフだった会場を「くっそう、恋してえよなあ!」てな気分に変化させることも勿論、すばらしき音楽の力&尊さではあります。

 でも、最初から誰かの愛を祝福するために集ったひとたちのなかにラブソングを放り込んだときに訪れたのは、最初から会場の全員が持っていたあるひとつの気持ちがカタチになる瞬間でありました。

 阪神が攻撃を畳みかけるときに阪神ファンから湧き上がる「六甲おろし」、ヤクルトファンなら「東京音頭」、24時間テレビの大団円には「昴」、そんな効果といいましょうか。例えが言いたかったことをいたずらにぼやかしてしまったでしょうか。これは失礼。

 つまりその、今まで空気に溶けていたある一つの気持ちが、突然大きなカタマリになって目の前に現れるような。「それそれ!言いたかった気持ちは!」と、そこにいる全員の溜飲が同時に下がるような。歌の持つ、そんな力を再認識したダブルヘッダーだったのであります。

「I’m in Love」。

 ゴスペラーズ北山くんをして「鉄板」というお言葉をいただきました。

 「てんとう虫のサンバ」も「乾杯」もいいけど皆さん、ご親族ご友人のおめでたい席においては是非とも「I’m in Love」。「I’m in Love」をご贔屓に。じゃんじゃん歌ってくださいな!なんせ鉄板お墨付きですから!




 なんてイイ調子で歩いていた深夜の帰り道。16時半から飲んでたんでそりゃもうスーツにギターぶらさげて千鳥足の深夜の帰り道。

 偶然にも友人のドラマーと遭遇。もう長いことつきあっているというガールフレンドと一緒だった彼と「やーどーもどーもー。」なんて話してたら彼より、

「あのー桜井さん、俺達近々入籍するんです。」

 なんてえセリフが。

 友人たちを祝福しまくってゴキゲン最高潮の酔っ払いに予期せぬ嬉しいアンコール。

 結婚をゴールと表現する人もいれば墓場と表現する人もいます。どちらにせよ結婚は誰かと共に生きていくことを決意した、男と女の愛のとある山の頂であることに間違いありません。それが人の営みの頂である以上、祝うべき素晴らしい出来事であることに疑いの余地はないのです。

 親愛なる友人たちよ、幸せをトリプルで食らった1日をどうもありがとう。

 お前たち、美しかったぜ!