パスタもいい、パンもいい。しかし異常な小麦価格高騰の折、今こそ余って仕方のないという国産の米・ライス・コメでしょ!

 TVも雑誌もやれおいしいパスタの作り方だ正しいパスタのすすり方だ女子に人気のパン屋だなんだ特集に次ぐ特集。いいのよ、いいの。大いに結構。でもね、苦労してわざわざ輸入した法外な値段の小麦ばっかり宣伝するより、この際イイ仕事してる日本の農家から炭水化物を摂取するように仕向けるのも、ドメスティック・メディアの人情ってえもんじゃねえか。ちがうかい?

 10代後半から家族を持った現在に至るまで、危険といえるレヴェルの高エンゲル係数で今なお暮らし続けている俺が断言する。

 本当においしいパスタやパンより、本当においしいコメのほうが、よりおいしい。

 これはもう、ブツが唇に触れた瞬間から胃袋へたどり着くまでに感じ取る、魂の問題です。

 日本で育った人でこの結論に異を唱える者がいるとしたら、そいつぁ可哀そうだが、育ち方を間違っちまった奴だと言わざるを得ない。気を悪くした人がいたら、今度俺と自由が丘の「さわや」に行こう。絶品の家庭料理の最後に食う白米の底力を、君は思い知ることになる。おみそ汁も一緒にね。

 とりあえずこの有事にあたしは提案します。

 学校給食はごはん中心に切り替えよ。よく考えたらなんでわざわざ毎日毎日パンなのか、そっちのほうが謎。戦後の欧米化政策の名残りかしら。だとしたら今こそ脱却するチャンス!だって、小麦、高いんでしょ。給食費上げたら、払わない親がきっとまた増えるでしょ。




 でまた酒もアレだね。文化の数だけ酒はあれど、やっぱりアレよ。「きゅっと」という擬声語がぴったりなアレ。日本酒でしょ、一番イイのは。

 ワインブームで寿司屋にワインを置くのも、悪かないけどみんなもう薄々感づいてるでしょ?無理あるって。いわんやシャンパンをや。寿司なんてえもんはぬるめの燗でキマリ。きれいにさばいてもらったお魚と酢飯は、それより少し温かめの燗酒と愛し合っているの。あとの酒はもう、それはそれで悪かないけど、2軍。

 ウォッカやテキーラで頭が爆発したり、バーボンでテレキャスを弾きたくなったりと、世界の酒と酔い方には何かしら因果関係があるような気がしてならないあたしですが、日本酒はもう、特に冷やでいただいたりした日にゃあもう、大変なことになりません?十中八九。

 あの、アルコールが直接DNAにヒットするような。フックをよけそこねて軽くアゴをこすっただけなのに天国行きな気分でマットに撃沈、そんな感じ。これって、深く深くDNAに刻まれた日本人のツボなのではないか、そんな気がしてならないのはあたしだけでしょうか。日本酒チン(アゴ、の意)説。

 冷や酒を呑むと決めた日は、それ相応の覚悟を要するものです。あたしの場合、3合が致死量。

 たとえば程よく冷えた「〆張鶴・純」が冷蔵庫にあったとして、首藤くんと二人、それを吞もう、呑みつくしてやろうということになったとします。単純計算で一人5合。あたしに関しては致死量の1.66倍がノルマになるわけで。

 家で吞めば誰にも迷惑かけないから家で!なんてえ考えは甘いも甘い。己を知らなさ過ぎるにも程があるというもの。

 2合半あたりですっかりゴキゲンなおとっつあん二人。

 まず、ギターを弾いて歌いだします、全力で。首藤君にもサックスでの参加を強要します、もちろん全力でのプレイを。当然うまく演奏できないので、こんな筈ではないとお手本のレコードをかけます。容赦のない音量で、次々と。それにかぶせて歌います、弾きます、吹きます、先ほど以上の音量で。先ほどよりも夜はふけているというのに。

 そのうち、トイレに行きたくなります。自分から一番近いところにあるドアの向こうがトイレであると思いこみます。ドアを開けます。

 ああ、もうここから先は想像するのも、ましてや書き記すのも恐ろしい。

 そんな恐ろしい日本酒。だけどいちばん好きな日本酒。

 たちの悪い女の子にひっかかってしまったということでしょうか。DJ、リクエストを頼む。ルースターズの「どうしようもない恋の歌」を。




 国の基礎は農業であると説いたのは西郷隆盛だったでしょうか。西郷どん、おいはその意見に賛成しもす。

 農家のみなさん、いつもごちそうさま!お米あってのジャパニーズ・ロックンローラーよ!!