転んだらただでは起き上がりたくないわけです。

 失敗は明日の成功のための糧とさせたいわけです。

 地べたに膝をついたのは、より高くジャンプするためなのであります。

 財布なんか、財布なんか買い替えたくないのです!

 そうなの。

財布をなくしてただ漫然と、

「新しい財布を買いにいってきまーす!」

 そんな気分になど、どうしてなれましょう。

 現金にキャッシュカードにクレジットカード、健康保険証(コンパクトなカードサイズになったのが仇に)にいろんな会員証。意外に悔しかったのがポイントのたまりまくったビッグカメラのポイントカード。それらを一気に失った経験をしながら、同じリスクを明日からも負うためにのうのうと新しい財布を買いに行くなど、どうしてできるというのでしょう。

 新システムの構築を急がねば、なわけです。

 各方面の友人からのアドバイスで一番多かったのが、「危険は分散させよ」ということ。現金はポッケに、カード類は別に、等々。なるほど。

 試しにお札をおしりのポッケにしまって移動する暮らしをしてみました。

 でも、当然ながら、二つ折りにされた福沢さんに樋口さんに野口先生はあたしのおしりに準じたゆるやかなカーブを描き、お会計の際に尻ポッケから出された彼らはこれまたあたしのおしり温度に準じたほかほか加減で、事と次第によっちゃあほんのり汗ばんだりもしているわけで。

 そんなお札を、ちょっとかわいかったりするレジの女の子に差し出すというのにゃあどうにも抵抗が…。

 それからカード類。気付けば増えている各種カード関係。

 カタチが同じだもんで今まで何も考えすにすべて財布にぎゅうぎゅう突っ込んでましたが、大事なものからそうでもないもの、頻繁に使うものから滅多に出さないものまで幅広かったんですね、カード類。

 あんまり使わない病院の診察券とかそれほど頻繁に使わない口座のキャッシュカード、それこそ健康保険証なんかは家に置いておいておくことに。あえて持って出かけたいものだけを、ふさわしい入れ物に収納して移動しようじゃないかと。

 とてもよく使うものはすなわちしょっちゅうポッケから出し入れするわけで。

 そこであたくし、久方ぶりにカードケース、いわゆる定期入れ的なものを試してみることに。最初っから素材やデザインにこだわってあんまり本気出すのもアレですので、まずは文房具屋で600円くらいのをあくまでも「カードケースというもの」のお試し期間用に購入。

 ま、便利は便利でした。

 SUICAとかね、財布を「もそっ」と機械に当てるよりなんとなくスムーズ。銀行のキャッシュディスペンスも以前よりスムーズはスムーズ。

 でもね、どうにも見た目が。

 どう見ても塾に通う中学生。そりゃ、定期入れですからね。しかも、わざわざチェーン付きのを買ったもんだから、お母さんに心配かけがちな男子中学生度数30%増しですよ。素材やデザインでなくあくまで「カードケースというもの」の存在自体が放つカルマとでも申しましょうか。チェーンじゃらじゃらが何一つファッション的役割を果たそうとしないのですよ。

 しかもこれ、お尻のポッケに入れればお札と同様の現象に巻きこまれるし、モノがカードだけに割れないまでもぐにゃーと曲った抵抗を腰かけるたんびにお尻に感じて落ち着かない。ジャケットの胸ポケにしまえばチェーンの置き場に困るし、鞄に入れてチェーンを鞄のどこかに引っ掛けてたら、こんどはお嫁さんに心配かけがちなおじいちゃんになった気分になる。

 すこぶるテンションが下がるのです。




 ま、お札を直接ポッケに入れることを不採用とした時点で、すでに必要になってるんすけでね。替えの財布。

 くそう。なんかねえかなあ。