免許証の更新に行ってきました。

誕生日が6月6日なので、失効ギリの滑りこみも滑りこみで。受付のおばちゃんに「あら、今日まで!」と笑われつつ極めて事務的な午前中を。相鉄線に乗って二俣川で。

 数年に一度訪れる運転免許試験場。毎度思うのですが、まあ、独特ですよね。雰囲気が。

 普段はそれぞれのテリトリーで暮らしている面々が一堂に会する。ヤンキー(二俣川においては主流を占める)におとっつあんに学生さん、たまに主婦、外国人…etc。広いフロアでみなさん各手続きにずらーっと並んでもれなく一斉に、

「ああ、面倒だなあ。」

 というオーラを放つ。しかしながらきちんと静かにつつがなく。もちろん一介のミュージシャンとて同じこと。みんな欲しいもんね、免許証。

 そんな面々で受ける安全運転講習。作りといいボロさといい大学の教室みたいな部屋で。とりわけそこで観る警視庁制作(?)の映画といいますかビデオ。ビデオといいますかさすがにDVDでしたが。これがまた、なんと言いますか独特なひとときで。

 前回、5年前はドラマ仕立てだったと記憶しています。主演は永嶋敏行さんではなかったかと。その時もここ二俣川運転免許試験場に集まったすべての人種に、

「ああ、他人事じゃないよ。やっぱ、安全運転で行こうよ、俺!」

 と誓わせるに十二分な切実な内容でした。ちょっとした気の緩みからある日突然“加害者”となり、苦悩する人生を余儀なくされる長嶋さん。ロープーのバイシーでした。どうしてここで業界用語なのでしょう。

 それはさておき、今回はなんとドキュメンタリー仕立て。しかも被害者の方々にスポットを当てる内容。それはもう、前回もさることながら今回はリアリティーがケタ違い。明らかに、

「前作を観た奴らが居眠りしないように、もっともっと説得力のある作品に仕上げなくては!」

 という警視庁(?)の真剣な意図が見えます。

 前回、すなわちドラマ仕立てでも各分野の人種を「安全運転」の名のもとにひとつにさせるに十分だったのに、今回の作品が上映終了して教室のカーテンが開けられたとき、その雰囲気ったらもう。

少し前まで同じ場所を覆っていた面倒オーラはどこへやら。危険な運転のもたらす悲しみや恐怖に完全に包囲され、ハンカチを手にする女性さえもいらっしゃいました。

 この調子でいくと、次回はどんなシロモノをみんなで鑑賞することになるのでしょうか。数年後が今から気が重い。

 無事に免許証はもらえたものの、どっぷり暗くなって駅まで歩く道すがら不意に後方より一人の青年が、

「あの、すいません。ファンです。握手してください。」

 と。

「あ、どうも、ありがとうございます。」

 と応じて、炎天下の人いきれの中手を握り合ってなんとなく気まずい男二人。明らかに先ほどの衝撃ドキュメンタリーをひきずっている男二人。青年は恥ずかしそうにうつむきながら早足で駅に向かっていきました。

 青年よ、お互い朝から参っちゃったなあ。共に安全ドライバーたろうぞ。