そのとき僕は健さんでした。

 途中下車した暮れなずむ武蔵小杉は法政通り。ラーメン屋のカウンターに座って口にした一口めのビールが喉を通り過ぎる。目の前には汗をかいたラガーの中瓶。右手のコップ、そして左手もぐっと握りしめ、眉間にしわをよせ全身でビールを感じている。

 思い出すのは「幸福の黄色いハンカチ」におけるラーメン屋のシーン。皮ジャンはおっているスタイリングまで含めて、確かに僕は健さんだったのです。

 そのときの網走刑務所より出所したての健さんは確かビールに加えてラーメンとチャーハンを注文し、一心不乱にがっついていたと記憶しています。

 生意気にも山田監督。ダイエット明けの不肖秀俊、あなたの演出に異議を唱えとうございます。人間、飢えた状態で目の前に夢にまで見た御馳走が湯気を立てていると、がっつくどころか普段以上にひと口ひと口大事に噛みしめて食べてしまうものでした。いろいろ注文したはいいけど、一品一品ひと口ひと口いちいち感動してなかなかどうして進まない食。




 午前中からはじまった真心ブラザーズ・12枚目のオリジナルアルバムジャケット用フォトセッションは予想以上の盛り上がりをみせ、予定時間を大幅に超えてしまう大試合に。その後もいくつかの雑務に追われ、やっとこさラーメンにありついたのが午後5時。

 終わってみれば楽しゅうございました、初めてのダイエット。

 ほんとにね、力石気分。蛇口に針金。あくまで気分ね。

 人間、食べないと元気出ないね。やっぱね、食べなきゃだめよ。特に米。力が、元気が出ないもの。ベリテンライブのあと、小一時間動けなかったもの。

 そういうわけで現在秀俊、リバウンド必至の暮らしに溺れきっております。




 PS.仕事にゃぬかりなし。この秋冬・一番陽気なおじさんたちの新譜が、全国のCDショップに並ぶ予定です。皆さま、乞うご期待。




 まだまだ忙しいぜ。