横浜の桜は終了してしまいました。今年も、あっという間に。

 毎年思いますがズルいですよね、このあっという間っぷりは。もうちょっと気がすんでから散ってくれてもいいものを。味わいきったと思う前に必ず去っていく憎らしいひと。そこがまた良いんだけどそう思うとますます悔しくて袖を噛んでしまう。そうして奴は1000年以上も俺たちの未練を引っぱってきたのでしょう。桜、まったくもって憎らしいひと。

 毎日毎日花を見上げては、

「あー、酒呑みたい。」

 と思いながら通り過ぎ、諸事に追われ、とうとう今年は花見をしそびれてしまいました。自らも企画せず、誰からも誘われず。

 何でしょう、この寂しさは。押し寄せる孤独は。

 家族を築いてからというもの、楽しい夜のお誘い件数は下がり続けること俺の右肩の如し。や、クリスマスや正月ならお誘いをためらわれることも分かります。しかしながらこと花見に至っては、

「桜井君もご家族でお花見でしょうからそっとしておきましょうよ。」

 などという道理はどこにもございませんよ。花見などというやさぐれものの酒呑みイベントを、どうして女房子供が望みましょう。どうして咲き誇る花の下で家族に向かって無礼講モードをさらすことなどできましょう。おい、友よ、誘ってよ、俺を!無理して夜桜拝んで「うー、寒い!」とか言おうよ。おい、友よ。あれ?君、友だよね?友だと思っているのは一方的に俺だけ?あれ?え?あーーーーーっっ!!!

 皆さん、悪夢です。汗、びっしょりです。

 北上すればまだ間に合うでしょうか。誰も誘ってくれないなら自分から企画すべきでしょうか。金沢は兼六園、秋田は角館、青森は弘前公園。まだまだ、まだまだ間に合うぜ。ブルーシートと一升瓶を抱えて俺と列車に飛び乗らないか?




 願わくば 花の下にて 春死なん

 その如月の 望月の比




 孤高のロックンローラー、西行さんの歌ですよ。いいよね~。格好良いにも限度ってもんがありますよね~。

 先日、何を隠そう私、彼を訪ねて一人、奈良県は吉野の山奥まで行ってまいりましたよ。吉野といえば古くから天下に轟く桜の名所。いつかの一人焼肉魂はどんどん進化を遂げ、いまや一人花見に一人ハイキングは当たり前になってしまいました。とっても楽しいのですが、このままではいけないような気もしています。完全に西行さんブーム到来中のあたしなのですが、語り合えるひとが見当たりません。

 友よ、俺とわいわいしてくれ。