なんだか大ヒットらしいですな。おっぱいバレー。

 面白かったですよ、映画。最重要課題であるところの綾瀬さんのスタイリング及びカメラワーク、問題なしでしたよ。

 とはいえメインイベントは、やはりアフターおっぱい。デート感満載のみなとみらいを抜けてダークサイド・ヨコハマはまだ明るい横浜野毛の街へ。オープンカフェならぬ単に通りにベンチを置いただけの席で瓶ビールをあおり餃子をぱくつくアラフォー男子桜井、一郎、首藤。地元の飲み友達女子を交えて4人の大人がおっぱいトーク。野毛散歩。梯子酒。楽しくないわけがございません。

 高校時分、確か化学の先生でした。口癖のように、

「大人になったらどうしても人間関係に利害がからんでしまって、損得抜きの付き合いってものはしづらくなる。だから、学生時代の友達は大事にしろよ。」

 な趣旨のことをおっしゃっていました。言っている意味がわからず、ただ「大人の世界ってそんなおっかないとこなんだー」と、ふぞろいな林檎の気持になって身震いしていたことを覚えています。

 先生、ぼく、40歳になりました。でも、いまだに先生があのときおっしゃっていた意味が分かりません。おっぱいトークに利害が見当たりません。一郎君が幼稚園時代に数カ月だけ野毛に住んでいたことが発覚してみんなで当時一郎少年が住んでいたマンションを探しに行った千鳥足に、損得勘定の余地が見いだせません。なぜに一郎君の原風景を大の大人がぞろぞろ体感しに行かなければいけないのか。そう言われればなんとなく損したっちゃあ損したような。でも、そういうことじゃないんですよね、先生。

 先生には申し訳ないけど、大人になっても別に変んないと思うよ、皆さん。楽しい人とは会いたくなる。利害も損得も避けては通れない大事なことだけど、それと友達は関係ないよ。首藤君は綾瀬はるかさんを綾瀬はるかさんと思わず河合奈保子さんだと自分自身に言い聞かせて映画を観ていたそうな。リアルな1979年へ。しかも映画の舞台が偶然にも首藤君が少年時代を過ごしたという北九州。アラフォー軍団はこぞっておっぱいに自身の原風景を重ねてあかちゃん返り。めんどくさくもクレイジーでハッピーな夜は更けていくのでした。俺たちはいつになったら中学を卒業出来るのでしょうか。

 思い出したことがもうひとつ。

 西城秀樹さん歌唱による昭和の大名曲“ヤングマン”。確かヴィレッジピープルのカヴァーであったかと。その曲のなかで「若いうちはやりたいことなんでもできるのさ」なるフレーズがあります。子供時分に呑気にYMCAのポーズをしながらも、「大人になったらどうして『やりたい!』と思ったことができなくなるんだろう」と己の未来に影を感じてブルーになったものです。

 秀樹さん、これもちょっと、おれ、今だにわかんないのです。気分が悪くなるまでお菓子を食べ続けるとか、徹夜で漫画を読むとか、ランチは寿司で夜は焼き肉とか、ガキの頃はできなかったもの。そういうことじゃないですか。そうですか、大人は自分のために使える時間も体力も限られているという意味ですか。だとしてもやはりよくわからないのです。少なくたって、なくなるわけじゃないんだもの。本当にやりたいことだったら、他の「なくてもそんなにダメージないかな」なものを削るスキルぐらいあるっしょ。大人なら。やるべきことは、そりゃあエニタイム山積です。でも、本当にやりたいことと言い切れる何かを前にして、山積しているそれは本当に「やるべきこと」でしょうか。そこで腹を括るか括らないかのチョイスを真剣にやるぶん、若いときより年をとればとるほど「やりたいこと」に対しては真剣になれるような気がするんだけどなあ。




 どうでしょ。