「浜真心」なるグループができました。フライングキッズの浜崎貴司さんと真心ブラザーズの二人からなる三人組。“はままごころ”では“ま”がカブって言いにくくはないか。「浜心」(ままごころ)の方がすっきりしているし、なんとなくロマンチシズムも感じられる。第一言いやすい。と、最近気づいたのですがもう本番が土曜日なので、まあいいや。まあいいや、で事は前に進むほどゆるぅいユニットではあります。もともと、関東エリアのライブ現場でお世話になっているホットスタッフプロモーシャンというイベンターさんの会社創立30周年イベントに出演させていただくためにこしらえたお祝いユニット。よいしょー!と歌ってさいならー!っつって、おめでとー!とビールにありつくイメージしか持っておらなんだったとです。Yo-Kingさんが言いました。
「3人の立ち位置さ、桜井センターでどうよ。」
「ああ、いいよいいよー。」
「せっかくだから、なんか歌ったら?」
「じゃー、『横浜市歌』を歌おうかな!今年は開港150周年イヤーだし。」
「いいじゃんいいじゃん、じゃあそれ、一人ね。俺と浜ちゃん横で見てるから。」
「はあい。」
こんな弛緩しきったやりとりを繰り返しておりました。会場は横浜アリーナと巨大ではありますが、まあ言ってもお祭りムードっしょ!やり逃げ上等っしょ!とタカをくくっておったのです。
秀俊、ちょっとばかし誤解をしておったようで。
聞けばチケットは完売状態だとか。あの巨大な横浜アリーナが。あわてて詳細を調べたら対バンはクロマニヨンズに東京スカパラダイスオーケストラ、HOME MADE家族さんやらなんやら人気者だらけ。極めつけは木村カエラさんとPerfumeさんによるこの日限りの特別ユニット。脳裏に浮かべた4人の女子の輝きと、対する俺たちくすんだアラフォー男のフォーク臭とのあまりの格差に、秀俊めまいを禁じ得ません。
困ったことになっている気がします。
猪木先生の「いつなんどき誰の挑戦でも受ける」をモットーとして日々生きてはおりますが、満員御礼2万のアウェーはさすがに…。
こんな日に限って立ち位置はど真ん中。「はやくカエラちゃん出てこないかしら」な視線を最も多く浴びる役割。そんな局面で俺が言わなければいけないのは、
「じゃあ聴いて下さい。『横浜市歌』!!!」
高い。いくらなんでも高すぎるぜこのハードル。しかも仲間はこのとき戦線離脱。安全な丘の上から戦局を傍観するのみ。俺、事実上敵国で己が国家を独唱する知らないおじさん。怖い。怖すぎるぜこのミッション。
でもね、みなさん聞いてほしい。この『横浜市歌』、実にいい歌なのよ。横浜の開港50年を記念して作られたもので、作詞はなんと明治の文豪・森鴎外翁!スケールでかく、未来への希望に満ち満ちたこの歌を、悪いけど書き出させてもらうよ!!
『横浜市歌』
わが日の本は島国よ 朝日かがよう海に
連なりそばだつ島々なれば あらゆる国より船こそ通え
されば 港の数多かれど この横浜に勝るあらめや
昔思えば 苫屋の煙 ちらりほらりと立てりしところ
今はもも船ももち船 泊まるところぞ見よや
果てなく栄えていくらん御代を
かざる宝も入りくる港
どうよこの、「行くぜ世界、カモン世界、俺たちNo.1!!」な気概にあふれた、それでいて懐かしくやさしい言の葉たちは。すげえな、さすがに人をして文豪と言わしめるお方の仕事は。
鴎外先生。先生が開港50年を記念して作られたこのうたはつまり今年で100歳になるわけですよね。2万人が集う地元屈指の大舞台・横浜アリーナのステージどセンターで独唱する機会を得たならば、この地に生きる人間としてはこれを歌わずして何をか歌わん!ですよね。
スカパラで踊りにきたひと、クロマニヨンズで暴れにきたひと、カエラ∞Perfumeに「きゃーっ!」て言いにきたひと。
合計4万の耳の穴に心をねじこむつもりで、歌いきってやりますよ、先生!
「ゆず」も「クレイジーケンバンド」もいいけど、俺もよろしく!!