大河ドラマ「龍馬伝」が大ヒットな2010年、あたくし目下30年前の大河「獅子の時代」に夢中です。なぜか。山田太一作品だから。TSUTAYAでDVD見つけちゃったから。

 太一作品は全作観るのが義務になっているのです、僕の場合。先月末の「遠回りの雨」も凄かった。絶対嫁さんと観ることのできない生々しい男女の縁、業。火のついたやけぼっくいに容赦なく油をそそぎまくる脚本。いくら巨匠だからっつって、お茶の間をいじめるのはやめてください。でも、ありがとう。最高でした。

 1980年の大河は凄い。なんせ全てにおいて、濃い。主演が菅原文太と加藤剛。濃い。脇を固める道草でおなじみ岡本信人にキンチョールCM「つまらん、お前の話はつまらん!」の記憶も新しい大滝秀治、大原麗子に大竹しのぶ、忘れちゃいけない藤真利子…etc。いちいち、濃い。とどめに音楽はダウンタウンブギウギバンド。このドラマの思い入れが強かったのでしょうか、オープニングのクレジットにはダウンタウン“ファイティング”ブギウギバンドと表記されております。下町のブギーな不良が戦闘中なわけであります。物騒です。ええ、濃すぎます。

 30年のタイムトラベルから帰還して観る2010年日曜8時の龍馬の、なんとさわやかなことか。文太のような、人殺しの目をしている人などひとりもいない。人斬り以蔵が、かわいい。「少し愛して、長く愛して」とささやかれて思わず太く短く愛したくなる罪な麗子のなまめかしさもない。華やかで、さわやかで、きれいで、デジタル高解析な映像&音像。龍馬という歴史上のスターを現代のスターたちが夢の競演、いわばオールスター坂本龍馬フェアーといったきらびやかさ。

 対する「獅子の時代」。大河では掟破りだそうですが、架空の人物が主役なのです。歴史の表舞台にあらわれない人こそ描きたい人物であるという太一の信念が曲げたNHKの道理。さすが師匠、ロックです。でもそのぶん、歴史的スターに感情移入するカタルシスを視聴者は奪われるわけで。ところがそんな寂しさを微塵も感じさせない菅原文太と加藤剛の人間力!彼らの熱演をいいことに、時代設定は幕末~明治黎明期なのですがそのダークサイドをこれでもか!と太一さん、描く描く。日曜8時からこんなに暗いものを天下のNHKでたっぷり一年全国に流させたと思うと、改めて師匠のでっかさにひざまずかざるを得ません。

 そんな「獅子の時代」。1巻4話入り全14巻、とうとう観終わってしまいました。寂しい。あと3年ぐらい続いてほしかった。技術も人も丸出しのアナログ、その生々しさ。そういったものはもう、失われてしまったものなのでしょうか。美しいとされる人の基準も著しくデジタル化傾向にあるような気がするのですが、僕だけでしょうか。藤真利子、甘く危険ですよ~。




 アナログソフトがデジタルに移行したり、You Tubeなどのコンテンツの登場というものが、はからずも過去を振り返らせる。加えてツイッターだのUSTREAMだの現在進行形ものもどんどん盛り上がっておる。まともに付き合っていたらなんも出来んくなりますな。さあ、何につきあいましょう。何を無視しましょう。