やはりこの世で最もかっこいいのはミュージシャンという人種ではないでしょうか。その中で歌い手というこれまた特殊な存在は別として、最強と言えるのはやはりギターだと思うのです。ギタリスト最強説。

 満を持して発売されました文楽三味線鶴澤清治さんの新譜、題して「一撥一心」。あえてギタリストと言ってしまいましょう。文字通り日本の宝、人間国宝鶴澤清治!義太夫節におけるサウンド部門のおいしいとこ満載な全22曲。販売促進のためだか知らないが変なストリングスとか入れるなんて小細工一切なし!From三番叟to the野崎村、頭っからお尻まで太棹の極意が堪能できる1枚となっております。こんなのを聴きたかったのよ。ものすごくマニアックな音源ですが、歴史的な1枚です。聴く用といつかサインもらう用の2枚を手に入れました。

 先日のクラブクアトロにおけるスーパージャンキーモンキー。トリオとなって復活した自称熟女バンドの迫力サウンド、かっこよくて泣けてきました。しかしギターの話となるとゲストで出ておられたこれまた久々に観させていただきましたバッファロードーターの、とりもなおさずシュガー吉永さん!小さな体にサンバーストのストラトをぶら下げ、マーシャルをがつんと鳴らすハードボイルドスタイルは健在。萌え、とはこういう気持ちのことをいうのでしょうか。膝から崩れ落ちました。

 1990年ごろ、渋谷のLa-mamaでフィッシュマンズとバッファロードーターの前身バンドであるハバナエキゾチカという最高にクールでハードな女性ファンクバンドとで対バンさせていただいたことがあります。そのときからのシュガー信者。リハーサルで聴いた彼女のギタープレイにあえなく昇天。生まれて初めて女性の靴を舐めたいという衝動が湧き上がったことを覚えています。あれから20年余り、同じ気持ちにさせられた40過ぎの俺。シュガーさんありがとう、俺の中のクレイジーをまた蘇らせてくれて。

 遡って7月末のフジロック。雨の夜更けの山中で目撃したロックンロールレジェンド、サンハウス。凄かった。濃かった。黒のタイトなパンツに上半身裸、真っ赤なロン毛に目張りぐりぐりの柴山俊之さん。イギー・ポップとかを超えて赤鬼か獅子舞いかはたまたなまはげなのか、とにかくこの世のものとは思えぬ妖気で次々とロックンロールを観客に投げつける。そして、そして、ギターはそう、鮎川誠さん!降り続ける雨の中、ビンテージの黒いレスポール・カスタム(小生も僭越ながら愛用)を二台のマーシャルでずぎゅーんと鳴らしまくる。ひっきりなしに。通常野外の雨の現場だと、ただでさえ湿気に弱いギター、ましてオールドのそれはそれなりのダメージを受けるため使用をためらうもの。それが鮎川さんときたら、

「別にー。」

 とばかりにずがーんずぎゅーん。けっこうなクルマぐらいの値打ちがする楽器を雨に打たせてずがーんずぎゅーん。This is rock!恐れ入りました。

 加えて鮎川さん、立ち位置であるステージ上手にほとんどいらっしゃらない。ではどこへ?そう、センターへ。たまにコーラスのために立ち位置に戻っても歌い終わればまたすぅーっとステージ中央へ吸い寄せられていく。客席から見て右側はほぼがら空きの状態。王シフトの逆。広島の山本浩二さんが現役時代に敵に敷かれたシフト。古すぎますか。何度、

「また寄っちゃってますよー!!」

と叫びたくなったことか。しかも、ソロでもないのにちょいちょい前に出てきて、更にまたセンターにすいーっと吸い寄せられ、完全に柴山さんを塞ぐかたちになること一度や二度じゃなかったですよ。鬼の形相のボーカルにふらりと平気でかぶるギタリスト。しびれました。ものすごくひやひやもしましたが。

 ライブ後、同パフォーマンスを目撃していたビクターの重鎮T氏と酒呑んでサンハウストークで盛りあがる。レコード会社のディレクターが見た’70年代の日本のロック話をたくさん伺いました。貴重なお話の数々、ありがとうございました。今年の5月に行われたサンハウスのツアーを収録したライブDVD「金輪際」でそのヤバさはたっぷり堪能できますよ!

「ロックンロール!」

そう叫ぶ若いミュージシャンはいっぱいいますが、自分も含めて、先輩ロックンローラーが放ちまくっていた悪の色気といいますか甘く危険な香りといいますか、そういった媚薬みたいな影がどうしたって足りない。その器でない、またはそういう時代に生きているというだけの話かもしれませんが、だとするならそんな影をまとう先輩の生のプレイをどうしても浴びておかなければいけない気がするのです。その姿勢が真面目だっつーの!と赤鬼先生に叱られそうですね。すいません、これぐらいにしておきます。




 だけど俺の黒いレスポールだって、今日もやっっばい音しているんだぜ。