aozora 北海道出身の作家で、「百合祭」で北海道新聞文学賞を受賞している。
そんな著者が北海道を舞台に、女子高生と老人の交流を描いた書下ろし長編作品。


主人公・高倉美有は16歳、高校2年生。
放課後は友達とつるむことよりも、図書館で好きな本を借りて読むことが好きである。
1つ年上の祐一というボーイフレンドがおり、時々バイクの後ろに乗せてもらって見る青い空を見るのを楽しんでいる。
いつものように学校の図書館で本を借り出し、中島公園で読もうと思っていた或る日、公園の東屋で老人に声をかけられる。
老人は岩尾伊佐治と名乗る。
74歳で画家だという。
他愛も無い会話を交わし、また会う約束をしてしまう美有。
老人は苦手だと思っていたはずなのにと戸惑うものの、伊佐治の個性に少しずつ惹かれていく。
伊佐治のアトリエへ通うデート生活が始まる。
週に2度ほど訪れては、ブルーフィルムを見せてくれたり手作りのタンシチューなどをごちそうしてくれ、知らない世界を教えてくれる伊佐治に少しずつ打ち解ける美有。
友人の行方不明、それに伴い親しくなった同級生、祐一との関係など、伊佐治と知り合ってから美有に少しずつ変化が生じていく。
伊佐治を異性としてなのか、老人としてなのか、好きだと思い始め伊佐治との時間によろこびを見つけられるようになってきた時、伊佐治は死んでしまう。
いつもと同じ放課後が戻ってきたけれど、美有は自分の中で何かが変わったことを感じる。

高校生が主人公の物語を読むのはこの数年苦痛で、本書も避けていたところがあったが、案ずるよりうむが易しとはよく言ったもので思いのほか楽しめてしまった。
女子高生と老人の交流など、実際には有り得ない設定ではある。
本作は、その辺りのもやもやは一切感じることなく、読み始めたら最後まで小説として楽しめるように作りこまれていた。
伊佐治という個性的な老人にしたことで嫌味もなく介護や老人への思いやりなんて側面とは関係のないところで老人を想う気持ちをうまく描いている。
ラストで老人が死を迎えるのはありきたりにも思えるが、それによって女子高生が得たもの、感じたことが良かったと思う。
次々ページが進み、1日で読めた。
なかなか面白い1冊。

<講談社 2000年>

桃谷 方子
青空